2017年5月13日土曜日

五月の路上は鼻血でいっぱい

ゴールデンウィークも終わり、気づけば5月半ばである。


この時期に人を悩ませるものといえば五月病だ。
連休明け初日、よく仕事をさせてもらっている某誌の編集部を訪れたところ、とつぜん右の鼻から鮮血が噴きだした。どうやら体が全力で働くことを拒否しているらしい。
うーむ、我がずぼら体質のすさまじさよ。


だからこそ五月病になってしまう人の気持ちはよく分かる。
そりゃ一週間も休んだら、仕事に行きたくなくなるよ。フリーランスのわたしでさえ、久々に外出しただけで鼻血が溢れたのだ。いわんや会社員をや。その切なさ、苦しさは想像するにあまりある。
五月の路上は今日も誰かの鼻血でいっぱいだ。


目下五月病に苦しんでいる人に云いたいのは、あまり自分を責めるべきではないということだ。
世の中には頑張れる人もいれば、頑張れない人もいる。一生のうちにできる努力の総量は、もしかして生まれつき決まっているのではないか、とさえ思うのだ。
ずぼらなのは別に悪いことではない。中学時代の担任教師に「おまえは怠け者だ」とはっきり指摘されたわたしなどは、自己弁護も兼ねてそう思っている。


さて。
五月病の人におすすめの小説をあげておこう。
朝ベッドから出たくない。職場の人の顔を見たくない。そんなときテンションの高い小説など読む気にもならないだろう。ハーマン・メルヴィルの「代書人バートルビー」を読んで、マイナス方向の愉悦に浸るのはいかがだろうか。


バートルビーは真面目な代書人だが、理解できない性格の持ち主である。
雇い主や同僚が代書以外の仕事を頼んだとしても、控えめに、しかし確固たる口調で「せずにすめばありがたいのですが」と答え、決して応じようとはしないのだ。どんなに上司が忙しそうでも、仲間が困っていても「せずにすめばありがたいのですが」「せずにすめばありがたいのですが」。そうくり返すだけだ。とうとう業を煮やした雇い主はバートルビーを馘にする。その結果、思いもよらない出来事が……。


常軌を逸した行動とともに、バートルビーがどんどん人間ばなれした存在に感じられてゆく、後半の展開がすばらしい。ずぼらも極めれば超自然的恐怖の域に達する。こうなると鼻血を噴きださせるのはむしろ上司のほうだ。






ボルヘス編の『バベルの図書館』(国書刊行会)で読むことができるので、これを参考にぜひずぼら道のプロを目指してほしい。と、つまらない商業コラムのような落ちをつけてしまったな。こういう落ちはつけずにすめばありがたいのだが……。


2017年4月7日金曜日

君知るやホラーマスク


久しぶりの更新です。


パソコンがないのでこの一か月半、本を読む以外はひたすら書斎に設けたピラミッドの下で、座禅を組んでいたのである。
するとどうだ!
いつしか私の体はロボット掃除機ルンバの如く、床から数センチメートルの高さまで浮き上がり、くるくると回転しはじめたではないか!


エリアーデが比較宗教学の領域で、「中心のシンボリズム」 ということを提唱しているのはよく知られているが、何によらず物体の廻転を愛するという傾向のなかにも、このシンボリズムがあらわれているのではないか、と私は考えている。独楽であれ、ランプであれ、炭取であれ、迷宮であれ、およそすべての物体の廻転運動は、中心軸を抜きにしては考えられないからである。そして、さらに私の独断をつけ加えるならば、この廻転と中心軸の愛好のうちにこそ、精神の健康を保つ秘密があるにちがいない、といいたいのだ。 ――澁澤龍彦「ランプの廻転」


とりあえず澁澤龍彦を引用すると、頭がよさそうに見える……というのは私が発見した、誰にも教えたくない文章構成上の裏ワザだが、それにしてもあんまり適当なことを書いていると諸方面から叱られそうなので、このあたりにしておこう。


扠。
先日はちょっと足をのばして、葛飾柴又までお花見に行ってきたのである。
それというのも昨年、これまで半端にしか鑑賞していなかった『男はつらいよ』シリーズ全48作を最後まで見終えたからで、ちょうど倍賞千恵子演ずるさくら像が駅前に立てられたこともあり、はるばる足をのばしてきたというわけだ。


帝釈天の参道入口には、柴又ハイカラ横町という懐かしい駄菓子や玩具を取りそろえたお店があって、おなじみ「ようかいけむり」だとか、お祭りの夜店で売っていた刃がひっこむナイフだとか、そういったレトロ商品がところせましと並んでいるのだが、今回そこでこんなものを見つけた。




ホラーマスク、である。
リンゴ味の「呪われた紅いミンツ」に、おまけとして恐怖マスクが封入されているらしい。これはホラーファンとして見逃すわけにはいかない。さっそくおひとつ購入してみた。
パッケージには「紅いミンツ、喰うとリンゴの味がした…」の文字。おどろおどろしい書体だが、考えてみればごく当たり前のことを述べているだけで、最近話題の「あたりまえポエム」のようでもある。


開けてみると中はこんな感じ。
薄桃色のミンツ菓子と、紙製の恐怖マスク、それを留めるための輪ゴムが2本入っている。




わが家の娘(ぺぺちゃん・280歳)に被せてみたらこうなった。どことなくシュルレアリスムの仮面のようでもある。ちなみに昨晩この状態にしたことをころっと忘れていて、いま背後にこいつが立っていたんで、心臓が止まるほどビックリしました……。

 


今回はゴリラめいた凶悪類人猿のマスクだったが、他にもいくつか種類があるのかしらん。今後も見かけたら買ってみたいと思う。紅いミンツはなるほど、たしかにリンゴの味がしました。


さて、かように、性における死の透視術がエロティシズムであれば、死の密度の異常に高まる革命と反革命の恐怖時代が、歴史のエロティックな時期であるという、先に述べたわたしの説も、あながち牽強付会ではないことが分ってもらえるであろう。 ――澁澤龍彦「テロオルについて」


分ってもらえるであろう。というわけで、また次回。


2017年3月3日金曜日

人生再起動中

悲劇!


ノートパソコンを紛失してしまいました。
この数年間に書いた原稿やメモ、撮った写真、保存していた音楽等、替えのきかないデータをすべて失いがっくり、頭が肩に埋まるほど落胆しているところです。うう…。


これまでどこの媒体の何月号にどんな記事を書いたか、リストで記録していたんですが、それも失ったため、私の仕事はもう誰にも全貌が把握できなくなりました。まあ、生生流転、タブララサ。また気分を変えて頑張るしかありますまい。
とりあえずはパソコンを買うお金を捻出せねばならぬので、これを読んだ関係者は速やかにお仕事のメールを送るように。HELP!


しばらくはネット環境が整わぬため、ブログの更新滞りがちになるやも知れず、乞御了承。根が怪奇的な人間ですので、なんらかの手段であなたの夢枕に暗示的メッセージを送ることもあるでしょう。ふっふっふ、お楽しみに。


では、実家で写したゾイドの写真でも見て元気を出しますか!




25年ぶりに電池を入れてみたら、ちゃんと動いたサーベルタイガー。

2017年2月17日金曜日

『UFO手帖 創刊号』でジャック・ヴァレ特集!



仕事がちょっと一段落ついたので、通販で購入していた『UFO手帖 創刊号』(Spファイル友の会)を読む。 コーヒーを飲みながら円盤本。至福のひととき。むふふ。





『UFO手帖』はUFOに関するマニアックな同人誌を刊行してきた「Spファイル友の会」の最新作で、UFOを中心としたパラノーマル現象関係のエッセイをあつめたものだ。
記念すべき創刊号の特集テーマは「ジャック・ヴァレへのパスポート」!


そりゃ買うでしょ。
存在を知った翌日にはお金を振り込み、郵送していただきました。
事務作業が大の苦手な私にしてこの素早さ。ジャック・ヴァレに関する情報に飢えている日本人がいかに多かったか、ということの証左ではないだろうか。違うだろうか。


知らない方のために説明しておくと、ジャック・ヴァレはフランス出身のUFO研究家。スピルバーグ監督の『未知との遭遇』でフランソワ・トリュフォーが演じたフランス人UFO学者のモデルになった人物としても知られる。


現代のUFO現象とヨーロッパ古来の民間伝承との共通点に着目した代表作『マゴニアへのパスポート』(1969)は、UFOは宇宙人の乗り物であるとする有力な仮説に疑問を呈し、

「だってよお、宇宙人つったってヘンなことしてばっかじゃん。人間誘拐したりよお、水のかわりに塩味のしないパンケーキくれたりよお。それって、あれじゃね? 昔から伝わる妖精とかと一緒じゃね? あんたら知らないかもしれねえけどさ、妖精ってのは昔っから塩、使わねえんだよ」

と、主張したことで斯界に衝撃を与えた(もちろんヴァレはインテリなのでこんな語り方はしないだろうが、わたしはインテリでないのでこうとしか要約できないのである)。


(原著新装版)


「マゴニア」とは中世ヨーロッパの伝説に見られる国の名で、空飛ぶ船でやってくる人々の拠点。
この語をタイトルに用いたヴァレの意図は明らかだろう。
中世フランスにマゴニアから飛来した船と、UFOと呼ばれるものは本質的に同一なのではないか? ならばUFOが宇宙人の乗り物であるとする一見もっともらしい説(専門的にはETHと呼ばれる)の基盤は、実はもろいものなのでは?


だってそうでしょう。300年も400年も前から人類がUFOや宇宙人っぽいものと遭遇し、よく似た奇妙な体験をしているのだとしたら……。これはもう心の問題と捉えるか(ユングのスタンスだ)、あるいは宇宙人という前提を捨て去って、さらに大きな視野による仮説を構築するしかない。


こうしたヴァレの主張は、真剣にUFOの正体を解き明かそうとしている研究者からは不評だったようだが(ETHサイドの研究者からは異端者扱いされたらしい)、UFO現象の歴史的・文化的側面に着目することで後続世代の研究者&ファンに大きな影響を与えた。
わが国では稲生平太郎氏が名著『何かが空を飛んでいる』でその説を詳しく紹介し、一般に知られるようになった。(さらに言うならそれを面白おかしくエッセイ集で取りあげた、大槻ケンヂ氏の功績も忘れることはできない)


さて、前置きが長くなった。
『UFO手帖 創刊号』のジャック・ヴァレ特集ではこうしたヴァレの魅力を多角的に紹介している。


書影入りのビブリオグラフィに始まり、ヴァレの方法が生まれた背景に迫った「『マゴニアへのパスポート』の時代と方法」、『マゴニア』の論旨を分かりやすく要約した「マゴニアへのパスポート拝見」、先に紹介した中世ヨーロッパのマゴニア伝説などについて知識を得ることができる「ジャック・ヴァレを知るための5つのキーワード」、個人的にヴァレを知る著者がその理論と人生を論じた「マゴニア異聞――孤高の異端者ジャック・ヴァレ」、ヴァレの代表作を自力で翻訳してしまった花田英次郎氏による「私家版『マゴニアへのパスポート』を翻訳して」と充実の内容。


とりわけ、ヴァレの陰謀UFO小説『異星人情報局』の翻訳者でもある磯部剛喜氏の「マゴニア異聞」は、ETHを信奉するドイツ系科学者グループと、ヨーロッパの伝統的神秘学思想(薔薇十字、錬金術、グノーシス)に通じたフランス人ヴァレという対立構図を浮かびあがらせ、なんとも刺激的だった。ヴァレが自らの「コントロール仮説」に通じるものとして、P・K・ディックの『ヴァリス』を薦めていたというエピソードも興味深い。


特集以外のページも、高橋克彦作品の紹介あり、円盤漫画やホラー映画のレビューありとその手の話題が好きな人にはたまらない内容。
『何かが空を飛んでいる』を読んでヴァレへの興味を焚きつけられた人はもちろん、 最近いいUFO本が出ないなあ、とお嘆きの方にもおすすめです。
気になる方は「Spファイル友の会」で検索を。


それにしても。
『マゴニアへのパスポート』が私家版で翻訳されていたなんて!嗚呼、SNSをしていない祟りか、今日までまったく知りませんでした。残念ながら現時点ですでに在庫切れとのこと。
増刷希望!増刷希望!増刷希望!


2017年2月13日月曜日

【お仕事紹介】神永学さんにインタビュー


最近へんなことに気づいてしまった。
どうやら自分はキングコングがたいへんに好きらしい。いや、キングコングに限らず猿系のモンスター&怪獣はおしなべて好きらしい。したがって、橘外男の獣人小説も好きらしい。


「らしい」と自分のことながら曖昧に書いているのは、最近はたと「あ、猿が好きなのかも」と気がついたからで、自分でもやや戸惑っているのです。 目ざめかけているのですが、なんだかまだ認めたくない気もするのです。
しかし。特撮ドラマや映画に猿絡みのエピソードがちょいちょいあるのは、一定数こういう人間がいるからなのだなあ。
というわけで『髑髏島の巨神』も行きますよ。


さて。
またまた仕事の紹介。
幻冬舎の小説誌『小説幻冬』2月号でもお仕事させていただいている。
戦国時代を舞台に、怪人妖魔が乱舞する人気の伝奇時代小説シリーズ『殺生伝』。
その第3部スタートにあたって、著者の神永学さんにインタビューさせていただいた。
波瀾万丈な物語の復権を!という意気込みにみちた熱いインタビュー。この号から連載開始した『殺生伝』第3部とともにぜひご一読ください。







そのうち猿も出てくるかなあ。わくわく。

2017年2月9日木曜日

【お仕事紹介】恒川光太郎さんにインタビュー!


おそらくそうするように教育されているのだろうが、スターバックスの店員さんって突如フレンドリーに話しかけてくることがあって、驚きますよね。


昨日も仕事の合間、さて夢枕獏でも読むか、と都心のスターバックスに立ち寄ったところ、いきなり「お洒落なリュックですね!」と若い女店員さんに声をかけられたのだった。
あらかじめ断っておくと、わたしのリュックはなんの変哲もない、黒いナイロン地のリュックである。マアお洒落だわ、と一目見て感じるようなものでは決してない。


「そうでしょう。これはビルマで死んだ祖父の形見なんですよ」とでも切り返せたらよかったのだが、突然のことに心が動揺してしまって、有り体にいうなら「知らない女の人に話しかけられた!」とふわふわ舞いあがってしまって、頭の中が白紙状態になり「いっひっひ」と意図不明に笑うのが精いっぱいであった。
美しい店員さんはムッとした顔になって、コーヒーを渡してくれたものである。


あんな時、澁澤龍彦ならどう答えたのだろうなあ、とぼんやり考えながら、満員電車に揺られて帰った怪奇幻想ライターなのだった。幻想文学の道は険しい。

 
さて。
これから仕事の紹介がしばらく続く。
まずは直近のところで、2月6日発売になったばかりの『ダ・ヴィンチ』3月号(KADOKAWA)。





ホラー短篇集『無貌の神』(KADOKAWA)を刊行した恒川光太郎さんに見開き2ページでインタビューした。
金色の神を崇める閉鎖的な集落を描いた表題作のほか、灰色に曇った空のもと生あたたかい風がどろどろと吹き抜けてゆくような、怪奇幻想譚が6編。デビュー作『夜市』以来の「隠れ里」趣味も健在で、懐かしき恐怖と幻想を心ゆくまで味わうことができる。恒川光太郎にしか描き得ない世界で、オススメ度、文句なしの★5ツだ。





ちなみに今月の『ダ・ヴィンチ』では北尾トロ氏の連載「走れ!トロイカ学習帳」がたいへんにおもしろい。
毎回出版業界周辺のネタを取りあげているこのコーナー、今月は「出版業界フリーランス物語 ライター・マンガ家のリアルとは!?」と銘打って、フリーランスとお金の関係に迫っている。
おお、おそろしいけど気になる話題!


たまに同業者と会っても、この手の際どい会話はできないので、興味津々で読んだ。
ライターとお金の問題について、もっと生々しく知りたいという奇特な方は(就活シーズンだしね)『編集会議』2016年秋号の特集「編集者・ライター、生き残りの条件」も併読されたい。







2017年2月4日土曜日

リニューアルした都立多摩図書館には「あれ」があった!


これまで立川市にあった東京都立多摩図書館が1月29日にリニューアルオープンした。
移転先はわがホームタウン、国分寺。
うちから歩いて10分、バイクで3分という立地である。


というわけで、さっそく活用させてもらっている。
都立図書館は都内に2館あり、南麻布にある中央図書館が新しめの書籍メイン。
このほどリニューアルした多摩図書館は、雑誌と児童書に力を入れている、という棲み分けがある。


雑誌が多い図書館が近所にあるのは、わたしのような商売の人間にとってたいへんありがたい。
仕事で必要になりそうな各文芸誌のバックナンバーをすぐにチェックすることができるし(文芸誌をきちんと揃えている公立図書館は少ない)、各分野の専門誌も広い閲覧スペースでチェックできる。日々の情報収集にはもってこいだ。
念のため専門分野である怪奇幻想系をチェックしてみると、お、出た、出た。
『幻想文学』も『牧神』も『幻想と怪奇』も創刊号からコンプリートされている。『幻想文学』の創刊号なんてなかなか手が出ないから嬉しいぞ。



雑誌以外でも、エイブラハム・メリット『魔女を焼き殺せ』、ヒチコック『私が選んだ最も怖い話』など、貴重な絶版ホラー本が収蔵されていて、タイトルを眺めているだけで胸がわくわくしてくる。
で、思った。


これだけ大きい図書館なら「あれ」もあるんじゃないか?


「あれ」とは何か。
古本が好きな方なら分かっていただけると思うが、いくら足を棒にして古本屋を巡っても、毎晩のようにネット書店で検索をかけても、なぜか出逢うことのできない幻の本、というのが世の中にはあるものだ。
新しい本屋に入るたび「で、『あれ』はないのかな?」と反射的に探してしまうのだが、それでもやっぱり見つからないライフワーク的探索本。
すなわち「あれ」。


私にとっての「あれ」とは他でもない、アメリカの超常現象研究家ジョン・A・キールが著わした『UFO超地球人説』(早川書房)のことだ。


(原書新装版のカバー)


『UFO超地球人説』は『Operation Trojan Horse』(1970)の邦訳で、UFOは文明の進んだ異星人の乗り物であるといういわゆる「地球外起源説」を否定し、超越的存在としてのUFO像を提示した画期的名著(であるらしい)。


超常現象とキールに興味を持って以来、ずーっと探してきたのだが、これまで一度もお目にかかったことがない。おそらく日本でもっとも超常現象本が多いと思われる中野ブロードウェイ4Fの「まんだらけ海馬」に足しげく通ってみたが、それでもダメ。出会いの気配すら訪れない。むう~。


どうもこの本、流通している数自体が少ないみたいで、稀代のUFOマニア3人による鼎談集『トンデモUFO入門』(山本弘、皆神龍太郎、志水一夫/洋泉社)にも次のようなやりとりがある。


皆神 なかなか手に入らない幻のUFO本、というのもあるね。僕は『UFO超地球人説』(早川書房)がどうしても手に入らない。

山本 あ、キールの! この前、ようやく手に入れた! 偶然入った古本屋で偶然見つけたの。







あの皆神龍太郎氏でさえ持っていないというのだから、いかに珍しい本であるかは推して知るべしである。


で、昨夜のことだ。
ちょっと都立多摩図書館に寄った際に、「そういや『あれ』をまだ検索してなかったな」と思いついたのである。


まさかないよなあ、なにしろUFO本だもんなあ、と心の中で予防線をはりつつ、慣れた手つきで「超地球人説」と打ちこむ。
「UFO」まで含めてしまうと半角・全角の区別でうまくヒットしないことがある、というのは長年の探索で身につけたコツだ。


期待せずに「検索」ボタンをクリック。
あ、あった。


え、え、え? どういうこと? 予想もつかない展開に軽いパニックを起こす。落ち着いて画面を見なおしてみたが……夢でも勘違いでもなかった
全国のUFOファンに声を大にしてお知らせしたい。
都立多摩図書館には『UFO超地球人説』があります!


さっそく閉架書庫から出してきてもらって、カウンターで「あれ」と対面。
おお、そうか、お前はこんなカバーデザインだったのか。卵みたいのが宇宙を飛んでるよ。味があるなあ。ソフトカバーで全体の佇まいとしては、大陸書房のオカルトノンフィクションに近い。なるほどなあ。


昨日は閉館時間が迫っていたのでほんのさわりしか読むことができなかったのだが(都立図書館は国会図書館と同じく貸し出しができない)、相変わらずのキール節でグイグイと怪しい世界に引き込まれた。
今度じっくり読みにゆくことにしよう。


本日の結論。
リニューアルした都立多摩図書館は最高だよ!


2017年2月3日金曜日

『威風堂々~人間椅子ライブ!!』





いやはや、大変な目に遭った。


昨日は東北地方で取材が一件。
朝から家を出て、新幹線で現地入りをした。取材が無事に済んだのが14時すぎ。同行した編集さんとカメラマンさんと「せっかくここまで来たんだしね」と窓の外の雪を眺めながら遅めのお飯を食べていると、そのうちに後ろの席のビジネスマンたちが「へ~、新幹線が運休だって」とスマホを眺めながら話しはじめた。
はっはご冗談を。半信半疑のまま駅へ駆け戻ってみると、たしかにそこには「大雪のため終日運休いたします」の文字が。うッ。


しゃあない。在来線で帰りましょう。と、数十分遅れてきたちっちゃな電車に乗り換えたのが17時のこと。電車はしんしんと降る雪を避けるうようにノロノロ運転でしばらく進んでいったが、ふいにがったん、と小さく揺れて停車した。


「えー、雪巻き込みのため、しばらく停車いたします。雪かき作業員がこちらに向かっておりますのでそのままでお待ち下さい」


雪を巻き込むって何だ?ざわめく車内。窓の外を見ると、どんより暗い山を背後に、寂れた無人駅のホームが雪を被っていた。最寄りの都会から車で向かっているという除雪作業員を待つ間も、ホームにはみるみる雪が積もっていく。


「おれ、様子見てくるわ」
焦れたのか、父と大学生くらいの娘の2人連れ客の父親が、そう言い残してホームに下りていった。ドアの開閉とともに、大量の雪が吹きこんでくる。ホームを歩く彼の姿が、だんだん見えなくなってゆく。


ああ、これはホラー映画でおなじみのやつだ。
私は思ったね。あのお父さんがほどなく「ギャーッ」という悲鳴とともに姿を消し、彼を探しに行くための決死隊が結成されて、そのメンバーも行方不明になり、ついには残された乗客たちも一人、また一人と吸血鬼に殺されてゆき……。


まあ、幸いなことにそんなスティーヴン・キング「呪われた村〈ジェルサレムズ・ロット〉」(『深夜勤務』所収)みたいな惨劇は起こらなかったのだが、電車がやっと動き出すまでの約2時間、いつ化け物の赤い眼が吹雪の向こうに見えるのか、怖くてたまらなかった。





結局、自宅にたどり着いたのは深夜0時。家を出たのは朝の9時だったから丸々1日出ていたことになる。うち仕事をしていたのは約1時間のみ。あとはずっと移動である。
そんな苦役を耐えられたのは、一緒に動いていた編集さんとカメラマンさんが音楽好きで気のいい方々だった、というのが大きい。


それと音楽プレイヤーに買ったばかりの人間椅子のアルバム『威風堂々~人間椅子ライブ!!』を入れていったので、退屈することがなかったのである。




『威風堂々』はこのところ絶頂期を迎えている人間椅子の最新ライヴアルバムだ。
数年前に出た『疾風怒濤』が増えてきた新規ファンに向けたベスト&入門編的な内容だったとするなら、今回の『威風堂々』はいわば応用編。
全キャリアを網羅したマニアックかつ新鮮な選曲で、とりわけディスク1には「さあ、どうだ」と言わんばかりにプログレッシヴなナンバーが並んでいる。
難曲「羅生門」の再現度の高さには驚かされるし、ドゥーム&狂気な初期の名曲「人間失格」はスタジオバージョンよりはるかに怖くなっている。


そして、クトゥルー神話に興味がある人にぜひ聞いてもらいたいのは、ディスク1に収録されている「宇宙からの色」「時間からの影」「狂気山脈」のラヴクラフトオマージュ3曲。


今回のライヴ盤、和嶋慎治のギターの音色がとにかく凶悪凶暴で、「宇宙からの色」なんてゴジラが出てきそうだし、「時間からの影」のイントロの異次元表現にも凄みが漂う。「狂気山脈」はラヴクラフトとシャンバラ幻想を重ねて表現したオカルトチックな雰囲気の傑作だが、もともとヘヴィだったリフは重さ5割増しで演奏されており、地の底から這い出る何かがたしかに見える!


たった3人で(しかも生演奏で)原典のもつコズミックな感覚に、ここまで接近しえたのは驚異としか言いようがない。
ハードロックに興味はないよ、という人でもラヴクラフト中長編の持つあの「異次元が悲鳴をあげているような感じ」が好きならきっと楽しめるはずだ。



2017年1月31日火曜日

一人で夜読むな


このブログ、何割の方がスマートフォンで見ているのか分からねど、たまにはパソコンでも見て欲しいのである。
なぜかというに。
このブログは画面の右端(こっち→)には、最近手がけた仕事がずらっと一覧になって表示されているからだ。


ところが、スマホ用のレイアウトではこの一覧が表示されないのです(最近気づきました)。
これではまるで電脳空間に妄言妄想を垂れ流しているだけの、自称著述業者のようではないですか。
まあ、概ねそんなようなものなのだが、たまにはパソコンで見てちょうだい、お仕事もちゃんとしているから、とまるで実家の母と電話をしているような気持ちで懇願する怪奇幻想ライターなのでした。


昨日はフレイザー・リー『断頭島 ギロチン・アイランド』(竹書房文庫)を風呂で読了。
ははあ、そう来ましたか。タイトルや帯の惹句からマイケル・スレイドのような首チョンパホラーかと思いきや、意外にも抑えめな展開。ローギアと2速の間を行き来しながらじわじわと進みます。
で、予想の斜め上からボールが飛んでくるラスト!お腹のあたりでミットを構えていたら、いきなり目玉にボールが当たったみたいな(笑)。
先日鑑賞したニコラス・レフン監督の『ネオン・デーモン』とも一脈通じる方向性で、しばらく咀嚼に時間を要するところも似ていました。


最近、扶桑社ミステリーがあまりモダンホラーを出さなくなったので、竹書房文庫がこうして2010年代の英国ホラーを紹介してくれたのは嬉しい。今後にも期待したいところですね。




2017年1月29日日曜日

購書日記(1月某日)


先日の『幽』文学賞パーティでお会いした千街晶之さん&澤村伊智さんと「あれはなかなか!」とひとしきり盛り上がったのがこちらの映画。


 
 

フェデ・アルバレス監督の『ドント・ブリーズ』
ヒットしてるっぽいんでご覧になった方も多いでしょうが、いや、これが意外に良作で。
結構怖いです。というより、ドキドキします。
つまりはホラーじゃなくて、よくできたサスペンス映画ですね。


「もしも泥棒に入った先が凶悪バイオレント爺ちゃんの棲み家だったら?」という、明快きわまりないログラインを120パーセント生かし切った脚本がいい味出してました。
このログラインだけでは、いわゆる出落ちになることは目に見えており、それを中盤以降どう回避してゆくかかが勝敗の分かれ目となるわけですが、この映画の出した答えは「いや、そうだよね、そうするしかないよね」と大いに納得のできるもの。
やり過ぎてはダメだけど、踏み込みが浅くてもダメ。
その狭間でうまいこと最良の答えを見付けたなあ、と感心いたしました。


個人的に気に入ったのは、硝子製のスポイトが出てくるあのシーン。笑っていいのか怖がっていいのか。ガンガン高まる狂気節に、ひいひい叫びながらの大笑いです。
同監督がリメイクを手がけた『死霊のはらわた』、どうせいつもの劣化リメイクだろ…と敬遠してたんですが、さっそくレンタルしてみなくては。


話はがらりと変わって、購書日記。
hontoに注文していたシェリダン・レ・ファニュの短編集『ドラゴン・ヴォランの部屋』(創元推理文庫)が届きました。

 


英国怪奇小説の巨匠、レ・ファニュ久々の邦訳版選集。
アトリエサードの「ナイトランド叢書」からは『魔術師の帝国 《1ゾシーク篇》』も出たし、年明け早々古典ホラー小説ファンには嬉しい展開となりましたね。
同時に届いたのは以下の4冊。




2016年に出たホラーで未読だったものをまとめて注文しました。
これらを消化したうえで、2016年活字ホラーの総括をきっちりしたいと思います。
ジョナサン・オージェ『夜の庭師』(創元推理文庫)はまったくのノーマークだった作品。カバーデザインから勝手にファンタジー系だと思いこんでいました。東雅夫氏の幻想と怪奇時評で「『クリムゾン・ピーク』と一脈通じる世界観」と紹介されていて、あわてて購入した次第。
風呂で読みました。面白かった。ティム・バートンが映画にしそうなゴーストストーリーです。