2017年6月12日月曜日

この週末に買った本


ホラー関連の新刊チェックのため新宿の大型書店へ。
以下の3冊を回収してきた。




ホラーとダークファンタジーの専門誌『ナイトランド・クォータリー』9号(アトリエサード)は、「悪夢と幻影」特集。
怪奇幻想文学とは縁の深い“夢”をテーマに、国内外の作品11編を掲載している。


『NLQ』といえば、ホラーの目利きである牧原勝志編集長による作品選定が最大の魅力。
今回もエドワード・ルーカス・ホワイト、М・P・シールらの古典系作家から、リサ・タトル、アンジェラ・スラッターなどの現代作家まで、かゆいところに手が届くセレクションで楽しませてくれる。
国産ホラー界の新鋭・澤村伊智が短編「夢の行き先」で『NLQ』初登場を果たしているのも嬉しい。
この週末に81ページまで読みましたが、いやあ面白いのなんの。1700円+税のもとは十分とれるので、怪奇幻想小説ファンはぜひお手元に。





ところでこれは余談なのだが。
「ルクンド」のE・L・ホワイトって「ジャンビー」のH・S・ホワイトヘッドとよくごっちゃになりません? わたしだけ? だって名前が似てるし、作風も若干かぶるし。しかも『NLQ』の作品解説によれば、ホワイトヘッドはホワイトを高く評価していたらしい。ホワイトヘッドの「唇」はホワイトの「ルクンド」を踏まえており、ホワイトの「アーミナ」の続編を企図したようにも読めるのがホワイトヘッドの「チャドボーン奇談」で……。ああ、ますますごっちゃになってきた!



黒木あるじ『怪談実話 終』(竹書房文庫)は、2010年刊の『怪談実話 叫』以来書き継がれてきた人気シリーズの最終巻。
あとがきによれば、一旦は怪談実話から離れることになるらしい。「これまでとはやや異なる視点で怪談にアプローチしたい」ということなので、黒木さんの今後の動向に注目である。





皿井垂『トラウマ日曜洋画劇場』(彩図社)は、1970~80年代にかけてテレビの洋画劇場で放映された映画49本をレビューしたもの。
この手のB級映画ガイドは見かけるとつい買ってしまうが、ジャンルや監督、制作年代ではなしに、「洋画劇場」というくくりで紹介しているのが新しい。


たとえば第三章「水曜ロードショー」では、『午後の曳航』『世界残酷物語』『ウィークエンド』『ダラスの熱い日』『恐怖のメロディ』『狼男アメリカン』『ウィラード』『ドラゴンへの道』『カサンドラ・クロス』の9本が取り上げられており、 ホラーとエロスとバイオレンスが混然一体となった、往年の洋画劇場の熱気を伝えてくれる。


『ヘルハウス』を「お化け屋敷映画の高尾山」に喩えたり、『カサンドラ・クロス』を「北大路魯山人の器にすき家の牛丼をよそって食べたような、不思議な気分が味わえる作品」と評したり、という作品への愛と知識に裏うちされた文章も楽しい。これは名著でありましょう。




そうこうしてたら椰月美智子さん『消えてなくなっても』(角川文庫)も届きました。
同じ本が2冊。なぜ?
答えは文庫版の解説を書かせてもらったから。
単行本刊行時、著者の椰月さんにインタビューする機会があり、そのご縁で文庫解説にもお声がけいただきました。


わたしが解説を書いていることからも分かるとおり、『消えてなくなっても』は椰月さんの作品にしては珍しい怪談&ファンタジー寄りの作品。それが椰月ワールドに特有の手ざわりとどう関わっているか、そのあたりを書いてみました。






2017年6月1日木曜日

お送りいただいた本


こんばんは、朝宮運河です。
シャンソンのステージからお届けしております。窓の外には蝙蝠が飛び、鬼火が舞い、覆面パトカーが走り回っておりますが……ほほほ……(拍手)。まず今夜は、皆さまからお送りいただいた素敵な本を、いくつか紹介させていただきます。


●牧野修『こどもつかい』(講談社タイガ)




著者の牧野さんよりお送りいただきました。清水崇監督の同名ホラー映画のノヴェライズ作品でございます。映画も小説も愉しみでございます。今日まで少々忙しかったので、まだ読めていないのですが、こうしてホラー小説をお送りいただく方がいる、しかもそれが大好きな牧野修さんであるというのは、ありがたいことでございます。シャンソン歌手冥利に尽きるというものでございます(拍手)。


●高橋葉介『夢幻紳士 怪奇編 愛蔵版』(早川書房)



早川書房よりお送りいただきました。『夢幻紳士』シリーズはわたくし、大好きな作品でございまして。『夢幻紳士』シリーズ、とりわけ「怪奇編」は『怪奇小説傑作集』や『こわい話・気味の悪い話』などの古風な英米怪奇小説と、岡本綺堂の怪談のムードをミックスしたような、ロマンと香気あふるる傑作でございます。
今回刊行されたのは、書き下ろしを含む愛蔵版でございまして。怪奇探偵夢幻魔実也氏の新しい事件を読むことができ、たいへんに嬉しかったのでございます(拍手)。


それではお聞きください。
今夜の一曲目、まずは「メケ・メケ」から……(罵声怒号)。


【『朝宮運河全曲集 これがシャンソンや!.』ブックレットより抜粋】





2017年5月29日月曜日

お風呂で読書 (第1回)


風呂で読むのにぴったりの本は何か?


それがここしばらく私の頭を悩ませている天下の一大問題である。
気ぜわしい日々を締めくくる夜のリラックスタイム、入浴。
多くの本好きの例にもれず、私は浴室に本を持ちこむことにしているのだが、さて、この風呂で読む本のセレクトというのが難しい。


お風呂に入ろうと思ってからたっぷり5分。半裸のまま書棚の間を徘徊して、本の山をどけたり崩したり。これでもない、あれでもないと、リラックスするためにたいへんな汗を流すことになる。
この悩ましさ、何かに似ていると思ったらあれだ。旅行先に持っていく文庫本を悩むのに似ているのだった。「NO、これじゃない!」と思っても交換できないから、毎晩が真剣勝負である。


そんな感じで悩んでいるうちに、これはお風呂向きじゃないなという本の系統が少しずつ明らかになってきた。
たとえばシリアスな純文学系は緊張するから国内外を問わず×。
人文系の評論・研究書も頭がこんぐらがるので避けたい。
ではエンタメ小説ならいいのかといえば、そうでもない。新しい物語に入りこむには意外とパワーが必要なのだ。
仕事の資料やゲラももちろん×。
好きな作家や普段なら積極的に読もうという気になる本(たとえば海外のモダンホラー)でも、「風呂場」という関所をなかなか突破できないのが面白い。


じゃあ、どんな本ならいいのか。
具体的にここ数日、お風呂で読んだ本を思い返してみる。


●5月28日(日):田中真知『理想郷シャンバラ』(学研)

中央アジアに存在するとされる理想郷シャンバラについて述べた本。レーリヒ、オッセンドウスキー、ヒトラーとこの手の本に出てくる話題をコンパクトにまとめており、今読み返しても良書。チベット仏教僧侶2名へのインタビューも貴重。




●5月27日(土):矢追純一『これが宇宙人(イーバ)との密約だ』(KKベストセラーズ)

この頃は楽しかったなあ。UFO研究史においてMJ-12関連の出来事というのはまあ、ひとつの大きな迂回路だったのだろうけども、UFO墜落、宇宙人による誘拐、家畜虐殺、政府と異星人の密約、という都市伝説みたいな情報がゴロゴロ出てきて、1980年代末期のUFO本は一種あぶない面白さがあった。
そう思ったのは大人になってからで、小学6年当時はわけが分からないまま市立図書館でドキドキしながら借りていたのですが。この本は「イーバ」という響きが、実に禍々しくてよかったね。
 



●5月27日(金):リチャード・C・ホーグランド『〈火星〉人面像の謎』(二見書房)

1976年、アメリカの火星探査船バイキング1号が撮影した、いわゆる「火星の人面岩」に関するノンフィクション。これも好きだったなあ。宇宙空間を見上げる巨大な人面の大岩、というSFチックなビジョンにたまらなくワクワクさせられた。
初版が1990年だから、上記矢追さんの本の1年後。MJ-12と人面岩はほぼ同時期のブームだったんですね。そういや、人面魚とかも同じ頃か。




うーむ。
地底王国シャンバラにMJ-12、火星の人面岩……。新書版のオカルト本ばかりではないか。
これだと「風呂で読むならオカルト本」という普遍性のなさすぎる結論が出てしまう。入浴時にぴったりの本を探り当てて、ビジネス書を書いてベストセラーにするつもりでいたのに……。


ほかに共通項をさぐるなら「どれも古本屋の100円ワゴンで売ってそう」ということだが、そこはたぶん関係ない。おそらく重要なポイントは、どれも再読本であるということだろう。だいぶ前に読んで面白かった記憶はあるものの、内容をよく覚えていない本。
もちろんそれ以外にも新書版であるとか、さらっと読みやすい文体で書かれているとか、途中でやめても先が気にならないとか、いろいろ要因はあるだろう。


果たして風呂で読むのにぴったりの本は何か?
これからも折に触れて研究していきたい。



2017年5月28日日曜日

【お仕事紹介】『本の旅人』6月号で武内涼さん×高橋敏夫さんの対談を取材


引き続きお仕事の紹介である。
KADOKAWAのPR誌『本の旅人』6月号にて、武内涼さんと高橋敏夫さんの対談を取材した。
武内さんの新作時代小説『暗殺者、野風』(KADOKAWA)の刊行記念対談である。


(左上にあるのは、武内さんのデビュー作『忍びの森』。妖怪×忍者!)




早稲田大学教授・文芸評論家の高橋さんは、武内さんの大学時代の恩師。
お互いをよく知るだけ間柄に、秘蔵エピソードがたくさん飛び出す和気あいあいの子弟対談となった。「伝奇」と「歴史」の距離について興味深い議論がなされているので、武内さんのファンはもちろん、時代小説好きも要チェック!この記事は『本の旅人』電子版でも読めるはずです。




古よりいかなる武士団にも属さず、中立を保ってきた暗殺者集落「隠り水の里」。戦によって両親を失った少女・野風は、その里で卓越した暗殺者へと成長してゆく。
『暗殺者、野風』は川中島の合戦を背景に超人的暗殺者たちの死闘を描いたエンターテインメント時代小説で、闇にうごめく者たちの姿がなんともカッコいい快作!




2017年5月25日木曜日

【お仕事紹介】『青春と読書』6月号で今野敏さんにインタビュー


集英社のPR誌『青春と読書』6月号が届きました。
今野敏さんに最新長篇『アンカー』(集英社)についてインタビューさせていただいています。




『アンカー』は報道番組ニュースイレブンの名物記者・布施京一の活躍を描いた報道ミステリー。シリーズ4本目となる今作では、布施が未解決のまま10年が経過している大学生刺殺事件に注目。番組で取り上げるようデスクの鳩村に求めます。スクープ記者の布施が一見ニュースバリューのなさそうなこの事件にこだわるのはなぜか?
スピーディな物語展開のなかに、報道の抱えるさまざまな矛盾をえぐった迫真の社会派エンターテインメントに仕上がっています。


今回のインタビューでは新キャラクター栃本誕生の経緯から、今野さんのジャーナリズム論まで幅広く語っていただきました。今野敏ファンのみなさんはぜひご一読を。ネットでも読めるんだそうですのよ。ちなみに取材場所は今野さんのお仕事場。四方の壁が書棚で埋まり、仕事机のそばにギターが数本並んだ素敵な空間でした。


本日、集英社より『アンカー』現物もお送りいただきました。5月30日発売です。




2017年5月13日土曜日

五月の路上は鼻血でいっぱい

ゴールデンウィークも終わり、気づけば5月半ばである。


この時期に人を悩ませるものといえば五月病だ。
連休明け初日、よく仕事をさせてもらっている某誌の編集部を訪れたところ、とつぜん右の鼻から鮮血が噴きだした。どうやら体が全力で働くことを拒否しているらしい。
うーむ、我がずぼら体質のすさまじさよ。


だからこそ五月病になってしまう人の気持ちはよく分かる。
そりゃ一週間も休んだら、仕事に行きたくなくなるよ。フリーランスのわたしでさえ、久々に外出しただけで鼻血が溢れたのだ。いわんや会社員をや。その切なさ、苦しさは想像するにあまりある。
五月の路上は今日も誰かの鼻血でいっぱいだ。


目下五月病に苦しんでいる人に云いたいのは、あまり自分を責めるべきではないということだ。
世の中には頑張れる人もいれば、頑張れない人もいる。一生のうちにできる努力の総量は、もしかして生まれつき決まっているのではないか、とさえ思うのだ。
ずぼらなのは別に悪いことではない。中学時代の担任教師に「おまえは怠け者だ」とはっきり指摘されたわたしなどは、自己弁護も兼ねてそう思っている。


さて。
五月病の人におすすめの小説をあげておこう。
朝ベッドから出たくない。職場の人の顔を見たくない。そんなときテンションの高い小説など読む気にもならないだろう。ハーマン・メルヴィルの「代書人バートルビー」を読んで、マイナス方向の愉悦に浸るのはいかがだろうか。


バートルビーは真面目な代書人だが、理解できない性格の持ち主である。
雇い主や同僚が代書以外の仕事を頼んだとしても、控えめに、しかし確固たる口調で「せずにすめばありがたいのですが」と答え、決して応じようとはしないのだ。どんなに上司が忙しそうでも、仲間が困っていても「せずにすめばありがたいのですが」「せずにすめばありがたいのですが」。そうくり返すだけだ。とうとう業を煮やした雇い主はバートルビーを馘にする。その結果、思いもよらない出来事が……。


常軌を逸した行動とともに、バートルビーがどんどん人間ばなれした存在に感じられてゆく、後半の展開がすばらしい。ずぼらも極めれば超自然的恐怖の域に達する。こうなると鼻血を噴きださせるのはむしろ上司のほうだ。






ボルヘス編の『バベルの図書館』(国書刊行会)で読むことができるので、これを参考にぜひずぼら道のプロを目指してほしい。と、つまらない商業コラムのような落ちをつけてしまったな。こういう落ちはつけずにすめばありがたいのだが……。


2017年4月7日金曜日

君知るやホラーマスク


久しぶりの更新です。


パソコンがないのでこの一か月半、本を読む以外はひたすら書斎に設けたピラミッドの下で、座禅を組んでいたのである。
するとどうだ!
いつしか私の体はロボット掃除機ルンバの如く、床から数センチメートルの高さまで浮き上がり、くるくると回転しはじめたではないか!


エリアーデが比較宗教学の領域で、「中心のシンボリズム」 ということを提唱しているのはよく知られているが、何によらず物体の廻転を愛するという傾向のなかにも、このシンボリズムがあらわれているのではないか、と私は考えている。独楽であれ、ランプであれ、炭取であれ、迷宮であれ、およそすべての物体の廻転運動は、中心軸を抜きにしては考えられないからである。そして、さらに私の独断をつけ加えるならば、この廻転と中心軸の愛好のうちにこそ、精神の健康を保つ秘密があるにちがいない、といいたいのだ。 ――澁澤龍彦「ランプの廻転」


とりあえず澁澤龍彦を引用すると、頭がよさそうに見える……というのは私が発見した、誰にも教えたくない文章構成上の裏ワザだが、それにしてもあんまり適当なことを書いていると諸方面から叱られそうなので、このあたりにしておこう。


扠。
先日はちょっと足をのばして、葛飾柴又までお花見に行ってきたのである。
それというのも昨年、これまで半端にしか鑑賞していなかった『男はつらいよ』シリーズ全48作を最後まで見終えたからで、ちょうど倍賞千恵子演ずるさくら像が駅前に立てられたこともあり、はるばる足をのばしてきたというわけだ。


帝釈天の参道入口には、柴又ハイカラ横町という懐かしい駄菓子や玩具を取りそろえたお店があって、おなじみ「ようかいけむり」だとか、お祭りの夜店で売っていた刃がひっこむナイフだとか、そういったレトロ商品がところせましと並んでいるのだが、今回そこでこんなものを見つけた。




ホラーマスク、である。
リンゴ味の「呪われた紅いミンツ」に、おまけとして恐怖マスクが封入されているらしい。これはホラーファンとして見逃すわけにはいかない。さっそくおひとつ購入してみた。
パッケージには「紅いミンツ、喰うとリンゴの味がした…」の文字。おどろおどろしい書体だが、考えてみればごく当たり前のことを述べているだけで、最近話題の「あたりまえポエム」のようでもある。


開けてみると中はこんな感じ。
薄桃色のミンツ菓子と、紙製の恐怖マスク、それを留めるための輪ゴムが2本入っている。




わが家の娘(ぺぺちゃん・280歳)に被せてみたらこうなった。どことなくシュルレアリスムの仮面のようでもある。ちなみに昨晩この状態にしたことをころっと忘れていて、いま背後にこいつが立っていたんで、心臓が止まるほどビックリしました……。

 


今回はゴリラめいた凶悪類人猿のマスクだったが、他にもいくつか種類があるのかしらん。今後も見かけたら買ってみたいと思う。紅いミンツはなるほど、たしかにリンゴの味がしました。


さて、かように、性における死の透視術がエロティシズムであれば、死の密度の異常に高まる革命と反革命の恐怖時代が、歴史のエロティックな時期であるという、先に述べたわたしの説も、あながち牽強付会ではないことが分ってもらえるであろう。 ――澁澤龍彦「テロオルについて」


分ってもらえるであろう。というわけで、また次回。


2017年3月3日金曜日

人生再起動中

悲劇!


ノートパソコンを紛失してしまいました。
この数年間に書いた原稿やメモ、撮った写真、保存していた音楽等、替えのきかないデータをすべて失いがっくり、頭が肩に埋まるほど落胆しているところです。うう…。


これまでどこの媒体の何月号にどんな記事を書いたか、リストで記録していたんですが、それも失ったため、私の仕事はもう誰にも全貌が把握できなくなりました。まあ、生生流転、タブララサ。また気分を変えて頑張るしかありますまい。
とりあえずはパソコンを買うお金を捻出せねばならぬので、これを読んだ関係者は速やかにお仕事のメールを送るように。HELP!


しばらくはネット環境が整わぬため、ブログの更新滞りがちになるやも知れず、乞御了承。根が怪奇的な人間ですので、なんらかの手段であなたの夢枕に暗示的メッセージを送ることもあるでしょう。ふっふっふ、お楽しみに。


では、実家で写したゾイドの写真でも見て元気を出しますか!




25年ぶりに電池を入れてみたら、ちゃんと動いたサーベルタイガー。

2017年2月17日金曜日

『UFO手帖 創刊号』でジャック・ヴァレ特集!



仕事がちょっと一段落ついたので、通販で購入していた『UFO手帖 創刊号』(Spファイル友の会)を読む。 コーヒーを飲みながら円盤本。至福のひととき。むふふ。





『UFO手帖』はUFOに関するマニアックな同人誌を刊行してきた「Spファイル友の会」の最新作で、UFOを中心としたパラノーマル現象関係のエッセイをあつめたものだ。
記念すべき創刊号の特集テーマは「ジャック・ヴァレへのパスポート」!


そりゃ買うでしょ。
存在を知った翌日にはお金を振り込み、郵送していただきました。
事務作業が大の苦手な私にしてこの素早さ。ジャック・ヴァレに関する情報に飢えている日本人がいかに多かったか、ということの証左ではないだろうか。違うだろうか。


知らない方のために説明しておくと、ジャック・ヴァレはフランス出身のUFO研究家。スピルバーグ監督の『未知との遭遇』でフランソワ・トリュフォーが演じたフランス人UFO学者のモデルになった人物としても知られる。


現代のUFO現象とヨーロッパ古来の民間伝承との共通点に着目した代表作『マゴニアへのパスポート』(1969)は、UFOは宇宙人の乗り物であるとする有力な仮説に疑問を呈し、

「だってよお、宇宙人つったってヘンなことしてばっかじゃん。人間誘拐したりよお、水のかわりに塩味のしないパンケーキくれたりよお。それって、あれじゃね? 昔から伝わる妖精とかと一緒じゃね? あんたら知らないかもしれねえけどさ、妖精ってのは昔っから塩、使わねえんだよ」

と、主張したことで斯界に衝撃を与えた(もちろんヴァレはインテリなのでこんな語り方はしないだろうが、わたしはインテリでないのでこうとしか要約できないのである)。


(原著新装版)


「マゴニア」とは中世ヨーロッパの伝説に見られる国の名で、空飛ぶ船でやってくる人々の拠点。
この語をタイトルに用いたヴァレの意図は明らかだろう。
中世フランスにマゴニアから飛来した船と、UFOと呼ばれるものは本質的に同一なのではないか? ならばUFOが宇宙人の乗り物であるとする一見もっともらしい説(専門的にはETHと呼ばれる)の基盤は、実はもろいものなのでは?


だってそうでしょう。300年も400年も前から人類がUFOや宇宙人っぽいものと遭遇し、よく似た奇妙な体験をしているのだとしたら……。これはもう心の問題と捉えるか(ユングのスタンスだ)、あるいは宇宙人という前提を捨て去って、さらに大きな視野による仮説を構築するしかない。


こうしたヴァレの主張は、真剣にUFOの正体を解き明かそうとしている研究者からは不評だったようだが(ETHサイドの研究者からは異端者扱いされたらしい)、UFO現象の歴史的・文化的側面に着目することで後続世代の研究者&ファンに大きな影響を与えた。
わが国では稲生平太郎氏が名著『何かが空を飛んでいる』でその説を詳しく紹介し、一般に知られるようになった。(さらに言うならそれを面白おかしくエッセイ集で取りあげた、大槻ケンヂ氏の功績も忘れることはできない)


さて、前置きが長くなった。
『UFO手帖 創刊号』のジャック・ヴァレ特集ではこうしたヴァレの魅力を多角的に紹介している。


書影入りのビブリオグラフィに始まり、ヴァレの方法が生まれた背景に迫った「『マゴニアへのパスポート』の時代と方法」、『マゴニア』の論旨を分かりやすく要約した「マゴニアへのパスポート拝見」、先に紹介した中世ヨーロッパのマゴニア伝説などについて知識を得ることができる「ジャック・ヴァレを知るための5つのキーワード」、個人的にヴァレを知る著者がその理論と人生を論じた「マゴニア異聞――孤高の異端者ジャック・ヴァレ」、ヴァレの代表作を自力で翻訳してしまった花田英次郎氏による「私家版『マゴニアへのパスポート』を翻訳して」と充実の内容。


とりわけ、ヴァレの陰謀UFO小説『異星人情報局』の翻訳者でもある磯部剛喜氏の「マゴニア異聞」は、ETHを信奉するドイツ系科学者グループと、ヨーロッパの伝統的神秘学思想(薔薇十字、錬金術、グノーシス)に通じたフランス人ヴァレという対立構図を浮かびあがらせ、なんとも刺激的だった。ヴァレが自らの「コントロール仮説」に通じるものとして、P・K・ディックの『ヴァリス』を薦めていたというエピソードも興味深い。


特集以外のページも、高橋克彦作品の紹介あり、円盤漫画やホラー映画のレビューありとその手の話題が好きな人にはたまらない内容。
『何かが空を飛んでいる』を読んでヴァレへの興味を焚きつけられた人はもちろん、 最近いいUFO本が出ないなあ、とお嘆きの方にもおすすめです。
気になる方は「Spファイル友の会」で検索を。


それにしても。
『マゴニアへのパスポート』が私家版で翻訳されていたなんて!嗚呼、SNSをしていない祟りか、今日までまったく知りませんでした。残念ながら現時点ですでに在庫切れとのこと。
増刷希望!増刷希望!増刷希望!


2017年2月13日月曜日

【お仕事紹介】神永学さんにインタビュー


最近へんなことに気づいてしまった。
どうやら自分はキングコングがたいへんに好きらしい。いや、キングコングに限らず猿系のモンスター&怪獣はおしなべて好きらしい。したがって、橘外男の獣人小説も好きらしい。


「らしい」と自分のことながら曖昧に書いているのは、最近はたと「あ、猿が好きなのかも」と気がついたからで、自分でもやや戸惑っているのです。 目ざめかけているのですが、なんだかまだ認めたくない気もするのです。
しかし。特撮ドラマや映画に猿絡みのエピソードがちょいちょいあるのは、一定数こういう人間がいるからなのだなあ。
というわけで『髑髏島の巨神』も行きますよ。


さて。
またまた仕事の紹介。
幻冬舎の小説誌『小説幻冬』2月号でもお仕事させていただいている。
戦国時代を舞台に、怪人妖魔が乱舞する人気の伝奇時代小説シリーズ『殺生伝』。
その第3部スタートにあたって、著者の神永学さんにインタビューさせていただいた。
波瀾万丈な物語の復権を!という意気込みにみちた熱いインタビュー。この号から連載開始した『殺生伝』第3部とともにぜひご一読ください。







そのうち猿も出てくるかなあ。わくわく。