2018年2月21日水曜日

怪老人日乗:2月20日(火)

背中に火を点けられたような案配で起床。朝方から終わっていない仕事をやる。ちなみに快晴。冬はもうおしまいかしら。と、思うと2月末にもう一回くらい雪が降ったりするのが通例だが、サテ今年はどうか。


朝食とってすぐさま近所のドトール。頭をまとめて某社の原稿。30分ほどやっていたら子どもが迎えに来て、家族3人中央線に乗る。家族は浅草寺にお守りもらいにいくというので、途中まで一緒に出かけたのである。わたしは四谷で降り、そのまま飯田橋、星鹿教団にこもってせっせこ原稿のつづき。お昼になったので店を出て、サクラテラス2階のイタリア料理屋で知人と会食。
この年になると将来の相談などされることあり、「わたしなんかに相談していいんかいな」と思わなくもないが、 自分も若い時分ずいぶん年長者に世話になったので、恩返しのつもりでできるだけ相談に乗るようにしている。今日もその手の相談であった。


で。
よく聞かれるので、ライターをやってみたいという人のために書いておくと、最初はやっぱり持ち込みですよ。いろんな媒体にコンタクトを取って、書いたものを見てもらう。商業的な文章を定期的に書ける人間ですよ、と誠実にアピールする。身近に編集者の知り合いでもいれば別だけど、そうでなければこれが王道にして早道であろう。
ネット上に面白い文章を書いているから、そのうち出版社から声がかかるのでは……と淡い夢を見る人もいるようだが、そういう待ちの姿勢でいると割とすぐ30歳、40歳になってしまうのでご注意を。


どんな仕事でもそうだろうが、ライター稼業も半村良の「箪笥」みたいなもので、やってみないと分からないことがたくさんある。ぼんやり「なりたいなあ」と思っているくらいなら、入り口はどこでもいいからまずは飛びこんでしまうのがいいのでしょう。近年はウェブメディアも増え、ライターの需要が高まっているし、自発的に動けばきっとなんとかなります。逆にいうと自分から動かなければ、どんなに文章がうまくっても、多分ライターにはなれない(別の何かにはなれるかも)。若人の健闘を祈る。


夕方まで飯田橋K社で仕事。いいところで切り上げ、高円寺の某古本屋に電話をかける。モダンホラーの品揃えがおそらく東京随一、という最高の店だが、おそろしいことに不定休。というか閉まっていることの方が多い。このところ空振りばかりだったので、学習して事前に電話をかけてみたわけ。すると「はい、××薬局でございます」と薬屋さんにつながった。ネットに出ている電話番号、間違っとるやんけ。じれったいので直接向かう。はいはい、やっぱり閉まってましたよ。


その近くにある中央書籍というお店、あまり真面目には見たことがなかったが、ついでに立ち寄ると隠秘学、神仙道、古史古伝、スピリチュアルの類がたくさんあり、あすかあきおのタロットカードまで売っていて、思わずじっくりチェック。ガラス戸には高橋洋『霊的ボリシェヴィキ』のチラシが並べて貼ってあって、そうか、そういう系統のお店だったのか、と納得する。それにしても21世紀に武田崇元にインスパイアされたホラー映画が公開されるとはねえ。時代はめぐる。
庚申通りのサンカクヤマなど他にも何軒か古本を眺め、久しぶりの高円寺を肺の奥まで吸い込んだのち帰宅。 買った本ナシ。


疲れたので夜はもう仕事なし。浅草のあんですマトバのあんパンをかじって、DVD眺める。お風呂で本を読んでいたら、いつの間にかうたた寝。文庫本の下半分が湯につかっていた。ほよよ。



2018年2月19日月曜日

怪老人日乗:2月18日(日)

快晴。
金土日と近所でずっと仕事。「じゃ、週明けまでにネ」と言われることが多いから、おおむね週末はこうなる。図書館、駅前のコーヒー屋、深夜のファミレスを転々として仕事をしているのだが、こういう稼業をしていると「東京は行くところが多くて助かるなあ」としみじみ思う。田舎は日が暮れるとどこも出るところがなく、夜道を歩いていたら間違いなくヤンキーに狩られるので、夜10時からふらっと原稿をやりに出る、なんてことができないのである。深夜のファミレスでは現代日本の音楽がたくさん流れており、大半はあまり得意でない恋愛的な歌だが、たまにドレスコーズが流れたりもする。


扠。
18日は日中、最寄りの図書館であれこれやった後、一旦帰宅して昼食。夕方から駅前に出て、ノートパソコンをたなえて最寄り駅のコーヒー屋でさらに仕上げ作業。「たなえる」というのは背負って歩く、くらいの意の北海道弁だが、好きなのであえて使い続ける。
帰宅後ポストを覗くと『青春と読書』(集英社)3月号が届いており、先月取材した神永学さん『浮雲心霊奇譚 白蛇の理』新刊インタビュー記事も掲載されていた。双葉社の編集Yさんからは平谷美樹さん新刊『義経暗殺』(二葉文庫)を送っていただく。平谷さまいつもありがとうございます。






夜は夜でウェブのニュースで澤村伊智『ぼぎわんが、来る』映画化決定、というニュースに触れびっくり。岡田准一主演というから、さらに驚愕。再びJホラーブームが到来するか。おめでたいことです。澤村伊智さんには長らくインタビューしていないが、ホラーについてあらためて一晩ほどじっくりお話を聞いてみたい気もする。KADOKAWA編集Iさん、いかがでしょうかね?


今日のおまけ画像。先週、大阪・新世界の映画館で見かけた『ブレードランナー2049』の映画絵看板。お土地柄かなんかこう、雄々しい感じになっている。先週末は大阪に帰省(家人の実家)していたのです。懐かしの天王寺「田園」でお茶をしようとするも改装中。大阪は古い喫茶店があって、よいですね。




2018年2月7日水曜日

怪老人日乗:2月6日(火)

快晴。
早起きするためにリビングで寝たのに、時計を見ると9時半である。あらら。朝食とって取材の支度。他の同業者がどの程度、取材の下準備に時間をかけるか知らないが、わたしはわりと多めに時間をとる方だと思う。なので取材当日はだいたいそれで埋まる。


ゲラ何度か読み返した後、質問項目をまとめて都心に出発。16時より飯田橋K社にて、某ミステリー作家さんのインタビュー取材。1時間ほどで滞りなく終了。その後、ブックオフをあいまいに眺めた後(飯田橋には息抜きになる古本屋がない)、拳銃片手にコーヒー屋に立てこもって遅れていた原稿1本、あらかた書いて時計見ると21時。お夕飯を外で済ませて、電車で帰宅したら23時すぎ。夜になると立川行きの総武線とか、日中あまり見ることがない電車が走ってくるのが面白いネ。


さて。
数日前から家族が関西に帰省しており、しばしのひとり暮らしである。スティーヴン・キングの『ミスター・メルセデス』では退職刑事ビル・ホッジスが妻子に去られ、昼間っから見たくもないテレビを眺めてビールを飲んでいる、という切ないシーンがあるが、今のわたしの暮らしも限りなくあれに近い。よくもまあ独身時代、10年以上もひとり暮らしをやっていたもんだ。我ながら信じられないことである。
たちまち部屋は散らかり、昼夜は逆転し、食生活も乱れがちになる。気晴らしといえばレンタルしてきた『超ムーの世界』のDVDを見るくらいで、あとは音楽を聴いて寝っ転がっている。『超ムーの世界』によれば、アメリカでは人を馬鹿にするウイルスが発見されたという。方向感覚や集中力に影響を与えるというから、どうもわたしはそれに感染していると思しい。


そんなわたしにもお仕事を依頼してくれる編集さんはいるので、鈴木光司さんの短編集『樹海』の文庫版(文春文庫)が届いた。こちらに巻末解説を寄稿している。そろそろ書店に並んでいると思われるので、興味のある方はぜひご一読下さい。




で。深夜2時半まで仕事。小さな〆切4つの特異日だったが、当然終わるわけもなし。2つ書くのがせいいっぱい。作業のおともはトラピストバタークッキー。郷里函館の銘菓である。修道院で作られている混じりっけなしのクッキーで、素朴ながらバターの風味が強く、子どもの頃はこれを囓りながら牛乳を飲むのが好きだった。
先日、ご夫婦で上京してきた郷里の心霊マニアI君にお土産でもらったもの。I君夫妻とは井の頭公園内のタイ料理屋で夕飯とりつつ、『稲川淳二 恐怖の現場』の神回はどれか?という答えのない会話で盛りあがったのだった。彼にいわせると「四国編は必見の作」らしい。「怪談テラーズ」という心霊番組も面白いそうだが、うちはケーブルテレビに入っていないので見られず。




2018年1月31日水曜日

怪老人日乗:1月30日(火)

快晴。
しばらく間が空いたのであるが、この間はあちこちで取材をしたり、風邪を引いたり。平穏無事です。
午前中、小さな原稿1本仕上げてメール。お昼におにぎり2ツ囓った後、最寄りの図書館に出撃。ブックレビューその他、いくつかの仕事を進める。夕方帰宅すると子どもが「ケーキを食べた」とあからさまな嘘をいう。子どもらしいなあ、と微笑ましく思っていたら、本当に買って食べたのでそうで、家を空けていたお父さんはショックを受けました。


のっそり身繕いして中央線で新宿まで。空き時間に紀伊國屋書店で新刊チェック、鈴木呂亜『恐怖実話 都怪ノ奇録』(竹書房文庫)、『ユリイカ2月号 クトゥルー神話の世界』(青土社)の2冊をひとまず購入。前者は黒木あるじ氏監修の怪談実話(というより都市伝説?)本。後者についてはまったく前情報なし、棚で見かけてびっくりであった。黒史郎氏、森瀬繚氏ら国内クトゥルー界隈の方々が結集している模様。

 
で、19時半より新宿3丁目のタイ料理屋で飲み会。某ホラー作家さんとカメラマンEさん、某誌編集Sさんとわたしの4人で、去年の秋やったインタビュー取材の遅い打ち上げである。ホラー作家さんとEさんは共通の知人も多く、これが2度目とは思えない盛りあがり方をする。象のはな子が人を踏み潰した話、ロシアのレーニン廟の話、スプーン曲げの話、その他諸々、話題は多岐にわたる。
 〆にむちゃくちゃ辛いタイ焼きそばを頼み(店内に白煙朦朦とし、すべての客が苦しげに咳き込むという代物)、終電近くまで飲んで解散。別れ際、Eさんが路上でスナップを撮ってくれたのだが、みんな泥酔顔に写っているであろう。わたしは例によってソフトドリンク、しかし楽しい会でございました。同方向の編集さんと中央線快速で帰る。


『本の旅人』2月号(KADOKAWA)が届く。『君を描けば嘘になる』(KADOKAWA)を刊行した綾崎隼さんにインタビューしています。同作は『君と時計と嘘の塔』の俊英が贈るアート×恋愛×ミステリ-。いろいろ創作の裏側についてうかがっています。ファンの皆さんはお見逃しなきよう。



2018年1月21日日曜日

怪老人日乗:1月19日(金)

快晴。
週明けは東京も雪らしいが、それが信じられないほどの青空である。


午から取材2件。まずはJRを乗り継いで、普段あまり縁のない大井町まで。あ、この駅はずいぶん前に降りたことがある。そうだ、怪談専門誌『幽』主催のイベント「怪談ノ宴」を見るために、きゅりあんという駅前のホールまで来たことがあったのだ。
調べてみるとイベントが開かれたのが2009年9月12日。うわあ、もう10年近くも前……。わたしも上京して間もない時期、バイトで糊口をしのいでいた頃である。パンフレットを探したら、ありました、ありました。蛇腹型で一面にはイベント出演作家のアンケート回答、もう一面には山下昇平さん画の「城南怪談繪圖」が掲載されている。出演陣の皆さん、9年前とほぼ見た目が変わっていないことにも吃驚。怪談にアンチエイジング効果ありや。




大井町で降りるのはあの日以来だ。線路沿いの渋い細道を歩き、某所に赴いて取材一件。JRの敷地内に煉瓦づくりの古風な大きな建物が見え、それがいかにも怪奇映画風で思わずシャッターを切る。あとで検索してみると、旧大井町変電所であるそうな。小一時間で仕事は済み、そこから神田へ移動。次の取材まで3時間ばかあったので、カレー屋とコーヒー屋で時間を潰す。定年近い年頃のサラリーマン2人づれが「よし、ここにするか!」と明るく言い合って雑居ビルに入っていくので、うまい店でもあるのかと思ったら「アジアン美女マッサージ」的なお店であった。世のお父さんはああして発散しているのだなあ。コーヒー屋はたまたま目についた斉藤コーヒー店。ずいぶん古くからある店らしいが、付近をぐるっと歩いてみると、他にもいい感じの喫茶店が多く、さすがは日本有数のオフィース街という感じ。






もう1本、取材を済ませ中央線で帰宅。夜はDVDで映画一本。このところ松本清張原作の『黒い画集』シリーズを続けて見ていて、この日は鈴木英夫監督『黒い画集 第二話 寒流』。 池部良演じる銀行マンが出世して美しい愛人を得たのもつかの間、好色常務の平田昭彦が絡んできたせいで一転つらい目に遭いまくるという話で、その転落の過程が一種のサスペンスになっている。池部良のじめっとした目つきが素晴らしく、ヒロインの新珠三千代ならずとも「みじめね」と感じてしまうのだ。しかしまあ、平田昭彦と志村喬が同じ画面に映ると、やっぱり身を乗り出してしまうよね。


KADOKAWAより工藤美代子さん『怖い顔の話』(角川文庫)が届く。かの感涙の名作「ヨシエさんの霊感」を含む怪談実話集『ノンフィクション作家だってお化けは怖い』の文庫版である。この文庫化に際して追加収録された工藤さんと荒俣宏さんの巻末対談(「日常の中に〝死者〟と〝あの世〟を探して」)の取材・構成を担当しております。
1月25日発売。印象的なカバー装画は、嶽まいこさんによるもの。



2018年1月17日水曜日

怪老人日乗:1月16日(火)

快晴。日中は3月並の陽気とか。


昨日は飯田橋にて某ホラー作家さんに取材。今日も今日とて原宿にて取材1本。今週は取材が5本あるという特異週だが、こういうペースで仕事しないと食べていかれないのも事実。南無阿弥陀仏。
久しぶりの原宿駅である。タケノコ族はさすがに絶滅、ホコ天バンドもいなかったが、平日でも賑やかな雰囲気は相変わらずである。竹下通からほど近いところにある某スポットで取材。


小一時間で無事に済んで、新宿に立ち寄り。調子が悪くなったミラーレス一眼を、オリンパスの修理センターに持ちこみする。新宿西口から都庁にかけての地下街、詳しくない人間にはまるで迷路で、なかなか目当ての出口にたどり着けず。諸星大二郎の短篇「地下鉄を降りて…」を思いだして怖くなる。
全身汗まみれになりやっと到達した窓口では「イメージセンサーの故障でしょう」と診断され、さらにモニターも壊れていることが判明し、見積額は3万9000円。グエッ。「家族と相談します…」と小声で言い残して、その場を去る。どっと疲れた。
朝から頭痛があり、めりめりと頭蓋骨割れそうな勢いになってきたので、地下街のバーガーショップ的なところで休息。どうにも1月は体調がよろしくない。
そういえば数年前、なんの苦労もなく禁煙に成功したのも1月のことであった。風邪が長引いて煙草を吸う気にならず、それでも無理矢理吸ってみたらあまりのまずさに悶絶し、自然と喫煙習慣が抜け落ちてしまったのである。


発売中の『小説野性時代』2月号にて、原稿を2ツ書いている。
ひとつは宮部みゆきさんの「三島屋変調百物語」シリーズの特集。シリーズのこれまでをおさらいし、全25話の簡単なあらすじ紹介を書いた。読み切りが掲載されているのにわせての企画である。
「三島屋」シリーズは1巻からリアルタイムで読んでいるが、ちゃんと話数をカウントしながら読んだことがなかったので(天下のウィキペディアにも出ていない)、貴重な経験でした。編集さん&著者ご本人のチェックが入っている記事なので、おそらく今後これがオフィシャルな話数カウントとなるはずです。
もうひとつが今野敏さんの伝奇警察ミステリー「鬼龍」シリーズの特集。こちらも新章が今月号から連載スタート。それにあわせて主要キャラ紹介、オカルト用語解説などを書かせてもらいました。
両シリーズのファンはお見逃しなきように。



2018年1月14日日曜日

怪老人日乗:1月13日(土)

快晴。
布団のなかで息子に怖い話をするのが、毎朝の仕事である。今日話したのは「留守番をしていたヨシコさんという女の子がテレビを見ていて、砂嵐のチャンネルに合わせたら彼女の名を呼ぶ声が聞こえた。他のチャンネルにしても、電源を切っても砂嵐と声は消えない。ついに画面から白い手が伸びてきて、ヨシコさんはテレビの世界に引っ張り込まれてしまった」という、『ポルターガイスト』&劇場版『リング』&『ねないこだれだ』みたいな話。こういう話は3歳児が聞いても怖いらしい。子どもでも分かる怖さと、伝わりにくい怖さとがあるみたいで、やっててタノシイです。


午前中、久しぶりにお鷹の道のあたりを散歩。京都の哲学の道をぐっとコンパクトにしたような、静かな自然遊歩道である。小川には蛍のエサになるカワニナが棲息している。豪農の家で蜜柑を一袋買って帰る。
午後は国分寺で仕事。七七舎で値付け&取り置きをお願いしてあった『ホラーマガジン』。今日行って聞いてみると、驚くほど安い。その6、7倍だろうと思っていたのだが……七七舎、偉い。




このところ仕事の合間に読んでいるのが、『Jホラー、怖さの秘密』(メディアミックス)というムック。鶴田、小中、中田、高橋、黒沢、一瀬、清水といったJホラーブームの立役者・キーパーソンをはじめとして、安里、松木、大畑、内藤といった第二世代、第三世代のクリエイターまでをカバーした大量のインタビュー記事は読み応えあり。ツボを押さえた作品レビューも役に立つ。無署名だけど誰が書いているんだろう。
この本、2104年に出たものだが、今hontoでアウトレット本扱いになっていて、600円ちょっとで買えるんですよ。Jホラー映画好きにはおすすめです。



2018年1月13日土曜日

怪老人日乗:1月12日(金)

日本全国大雪。されど東京は快晴。


午前中から家を出て、都内で転々と仕事。合間に映画の試写一本。これも仕事絡みである。帰り道、書店チェックして『UFO手帖2.0』(Spファイル友の会)を発見。以前ここで紹介したこともあるUFO同人誌の新刊が出たのだ。即座に購入。
国分寺の古本屋、七七舎に立ち寄って(お目当ての雑誌はまだ棚に出ていなかった) 寒空の下、ふらーりと怨霊のように帰宅する。
夕飯、鯖の塩焼き、大根と絹揚げの煮物など。自家製梅ジュースを炭酸水で割って、DVDで映画鑑賞。
夜、京都の旧友K君より連絡。烏丸今出川の交差点にあったTSUTAYA、閉店してしまったという。一等地で地代も高かったのだろうが、学生街にレンタル屋がなくなるとはねえ。もっともわたしも京都時代ここのTSUTAYAあまり使わず、千本中立売の角にあった2階建てのレンタル屋ほか(名前失念)、鞍馬口のマジカルブレイン、大徳寺のビデオインアメリカ、高野のビデオワンまでせっせと自転車を漕いで通った。暇だったのだね。


そうそう。今日の夕方、某駅ビルにて楳図かずお先生を目撃した。前にも吉祥寺の路上で一度、お見かけしたことがあるが、今日はもっと至近距離。赤白ストライプのマフラーを巻いて、X-girlのブルゾンをはおっておられた。お元気そうでした。よかつた、よかつた。


さて。
前からやろうと思っていた「シリーズもので持っていない巻はどれだ」チェックに着手。
今日はちくま文庫を総ざらいする。特に気になっていたのが、東雅夫編「文豪怪談傑
作選」シリーズだ。何冊か買い逃していたという自覚はあるが、それがどれなのか明瞭でなく、本屋に行っても阿呆のように手にとっては返し、買うことができず。困っていたのだ。

で、やりましたよ。
ありゃ!シリーズ5巻目にあたる『百物語怪談会』がいきなり抜けている。この楽しそうな本をなぜ買わなかったんだ、当時の自分。お金がなかったのかなあ。さらに見ていくと『折口信夫集 神の嫁』『芥川龍之介集 妖婆』がないことも分かる。折口は難しそうだから後回しにしたんでしょうな。
その後の明治・大正・昭和篇と続いたシリーズは順調に揃えているが、鏡花=柳田ラインの作品をまとめた労作「花柳叢書」は『河童のお弟子』も『山海評判記/オシラ神の話』も持っていない。うーむ、こりゃ幻想小説ファン失格だ。
幻想小説といえば「世界幻想文学大全」、『幻想文学入門』と『怪奇小説精華』の巻は買っているのに、なぜか『幻想小説神髄』だけ抜けている。怪奇を優先して、幻想まで手がまわらなかったか。




その他、ちくまの気になっているシリーズものもチェック。ほぼ全巻持っているだろうと思っていた日下三蔵編の「怪奇探偵小説傑作選」「怪奇探偵小説名作選」が案外ボロボロだったり、西崎憲編のアンソロジーでは『怪奇小説日和』を持っているのに『短篇小説日和』を買っていなかったり。
もともと網羅欲がそれほど強くないうえに、手もと不如意であることが多いから、どうしても歯抜け蔵書ができてしまう。自分のテキトーな性格の体現とはいえ、なんとなく背中がかゆくなる作業なのでした。がんばって揃えるぞ。



2018年1月10日水曜日

怪老人日乗:1月9日(火)

快晴。
北日本はまたも大荒れらしいが、東京は春先の暖かさである。
午前中からせっせこ原稿。you tubeで妙ちきりんな歌をいろいろかけながら午後までやり、2時になったので身繕いして都心に出発。久しぶりに電車に乗ったら、情けないこと、酔いました。ぐったりして本も読めず。午後そこからゲラ戻し、某誌の入稿、レビュー下書きなど進めて、午後7時からずっとお世話になっている某月刊誌の新年会へ顔を出す。


若い頃はこの手の集まり、どうしようもなく苦手で、直前になって仮病でキャンセルしたり、本当に具合が悪くなって帰ったりしていたのだが(自分の送別会で「目眩がするのでそろそろ……」と中座したこともある)、もう大人だからそういうことはない。楽しく2時間飲む。会場は神楽坂のAZZURRIという、朝松健『弧の増殖』の擬音のような店名の(分かりにくい喩えですみません)肉料理中心のイタリアン。


お向かいがフリーのデザイナーさんで、「われわれみたいな人間、老後はどうなるんでしょうねえ」という話などする。フリーランス同士で盛りあがる鉄板の話題だが、解決策が見えたためしがない。結局、一発当てて逃げるしかないのか。あとは20代の女性編集者たちがマリスミゼルを知らないことに軽いショックを受けたり。ビジュアル系ブーム遠くなりにけり。それほど大きな声を出したつもりはないのだが、こういう席だと普段と違う発声になるのか、1時間ほどで声がかれ、咳が出る。これもまた情けないことである。


帰宅して風呂でレビュー用の本など読み進め、明日の取材の支度をして寝る。
そうそう。忘れぬように書いておくが、先日本を売りにいった際、国分寺の七七舎には『ホラーマガジン』(『SFマガジン』1987年7月臨時増刊号)があったのだ。ずっと探していた本。なんたってタイトルがいいじゃないですか。『SFマガジン』『ミステリマガジン』ときて『ホラーマガジン』。第三の矢がついに放たれた、という感じがして。
左手で買取の紙袋を差しだすかたわら、右手でむんずとひっつかみ「これください」と叫んだのだが、まだ値付けが済んでいないとのこと。うーむ残念。こうなったらしばらくの間、七七舎に通い続けるしかないだろう。


(『弧の増殖』の擬音めいた……)

2018年1月7日日曜日

怪老人日乗:1月7日(日)

快晴。
仕事部屋に溢れかえっている本から、売れるものを峻別。40冊ほど紙袋に詰めて、国分寺の七七舎に売りにゆく。いつもなら西荻窪の音羽館まで売りにゆくのだが、今日は子連れだったので近場で。査定結果は後日。それにしても、40冊減ったくらいでは室内の見た目はまったく変わらない。怪奇幻想小説と超常現象をきっぱり諦めたら8割くらい減らせそうだが、そうなると本を持っている意味がなくなる気もする。
日中妻は花屋さんとの新年会に出かけ、数時間子どもと過ごす。わたしはいまだ風邪気味で調子出ず、子どもも鼻ぐずぐずで体力なし。夕方帰宅すると部屋の電気消えており、妻悪寒がするといって寝込んでいた。風邪に魅入られた正月であることよ。


そうそう。
いま思いだしたが昨晩、近所のコンビニまで買い物に行ったら、その脇に白い帽子をかぶった小さなお地蔵さんが立っていた。おかしいのである。帰省するまではここにお地蔵さんなど立っていなかったはずだが……。風邪で頭ぼんやりしていることもあり、その佇まいが妙に怖い。背筋がひんやりとする。こわごわ近づいたら、何のことはない、ごみのつまったビニール袋が低いフェンスに置かれているだけであった。


『本の旅人』1月号(KADOKAWA)とどく。
巻頭インタビューの下村敦史さん(新刊『サハラの薔薇』について)、川瀬七緖さんと池澤春菜さんの対談(川瀬さんの新刊『テーラー伊三郎』について)の2企画の取材・構成を担当しました。ご高覧いただけると幸いです。