2017年8月12日土曜日

『吐きだめの悪魔』オリジナルサウンドトラックで脳が溶けた





旧くからの友人が映画『吐きだめの悪魔』のサウンドトラックを送ってくれた。
京都の中古CD屋で800円で売られていたそうな。
それは果たして安いのか、高いのか。


『吐きだめの悪魔』は1987年制作のアメリカホラー映画だ。
原題は『STREET  TRASH』で監督はジム・ミューロー。
 

酒屋の地下室から古い酒瓶が見つかった。こりゃあ安くてウマい、サイコーだ、と大喜びで飲みほす貧民街の住人たち。しかしその酒にはいけない成分が含まれていたらしく、飲んだ者たちの体がドロドロと溶けはじめた。助けてくれー! と、まあそんな映画である。
細かい部分は忘れてしまったが、筋はあってないようなもの。この映画は人間がカラフルに(なぜか紫とか緑とかの液体になる)溶解してゆく様子をただひたすらに、脳天気なムードで映し出す。

 
低予算のカルトホラーとして一部で有名な作品。
とはいえカルト映画ならではの特異な芸術性や反俗性を期待してはいけない。感想は「ヒドいものを見た!」、その一言に尽きます(笑)。いや、それでは無名の才人ジム・ミューロー監督にあまりに失礼だろう。と、一生懸命プラスの評価を試みはするけれど、やっぱり「汚い!」「下品!」「幼稚!」といった単語しか浮かんでこない。ううむ。困った映画だ。
頭のいい人やセンスのいい人は、半径10メートル以内に近づかない方が無難だろう。




しかししかし。
わたしはなぜかこの映画が大好きなんですね。というか、基本的に人が溶ける映画が好きだから、この映画のことも、好きにならずにいられないのである。
それにしてもどうして人間が溶ける描写というのは、ああもわたしたちの心を惹きつけ、妖しい興奮を呼び起こすのだろうか。


『ビヨンド』の硫酸ドロドロも、『吸血髑髏船』の薬品ドロドロも、『悪魔の毒毒モンスター』の工場廃液ドロドロも、ああ、あらゆるドロドロが愛おしい。と、若干かっこよさげに書いてみるが、全然かっこよいものではなく、ただ単に悪趣味なだけだろう。


というわけでこのサントラも大いに嬉しかったのだ。
送りつけておいて「お前は悪趣味だ」と糾弾してくる友人もどうかと思うが、それでもやはり持つべきものは友である。わたしのことをよくわかっている。
で、ドキドキしながら再生しました。










(……10分経過……)












な、なんじゃこりゃ~!!


2017年8月8日火曜日

汗みずく棚に囲まれ脱水し(其角)


まったく人生なにが起こるかわからない。
たとえばわたしが突然、売れっ子ユーチューバーになる可能性だって皆無とはいえないだろう。
もし売れっ子ユーチューバーになったらどうするか?
答えは決まっている。
手にした大金で仕事部屋にエアコンをつけるのだ。


わたしの仕事部屋にはエアコンがない。
こう書くとどこか山田詠美的だが(ぼくは空調ができない……)、その理由というのは実に形而下的なもので、ひとつには引越時余分なエアコンを購入するだけの資金がなかったため、もうひとつには天井まである本棚でエアコン取付用の壁穴を塞いでしまったためだ。


引越時は1冊でも多く本が入るように、とそればかり考えていたから、空調や採光なんて二の次三の次であった。 だからエアコンの穴もあっさり本棚で塞いだし、2つあった窓の1つも覆ってしまったのである。その結果どうなったか。夏暑く、冬は寒くてたまらない仕事部屋が一丁できあがった。


扠。
『デニス・ホイートリー黒魔術小説傑作選』を思い切って購入した話は、昨日ここで書いたとおりである。で、目下『傑作選』を入れるスペースを確保するべく、仕事部屋の本を減らしているのだが……いやあ、エアコンのない部屋で本棚整理はするもんじゃないですね。
埃と汗とでたちまちマカロニウエスタンの端役のような姿になってしまった。


苦心の甲斐あって、20~30冊ほどは減らせそうなのだが、それはあくまで部屋全体での話。
重厚な函入全7冊セットを鎮座させられるスペースはなかなか現れない。うーん、参つたな。
部屋を見わたしてしばし悩んだすえ、「キミに決めた!」と指さして叫んだのは海外文学棚のてっぺん。現在白水Uブックスとアーカムハウス叢書が置いてある場所であった。


 (この棚のてっぺんをわんぱくデニスの居場所に決定)


白水Uブックスはノベルスと同サイズなので、国産ミステリーのノベルスを若干減らし、そちらのコーナーに合流させることにした。平積みにされている可哀想なアーカムハウス叢書は、現在混迷をきわめる海外棚を整理整頓することでスペースを確保できるのではないか、と思っている。



(ナイトランド叢書の続きはどこにあるんだろう……)


ところで。
この海外棚の向こうというのがまさにエアコン用の壁穴がある位置で、どでかい『黒魔術小説傑作選』なんて置いたらますます、エアコンをつける日が遠のきそうな予感。
売れっ子ユーチューバーになったらとりあえず、最高級の扇風機と洒落たどてらを買うことにします。


2017年8月7日月曜日

もう少し棚が欲しいと書痴が鳴く(芭蕉)3


さて。
なぜわたしが本を処分しなければならなくなったのか。
世間的にはまったくどうでもいい話をここまでゲームブック形式でお届けしてきたが、ついにその理由を述べるべきときがきた。
「1」からワープしてきた方のために説明しておくと、阿佐ヶ谷の七夕祭りを見物に行き、久しぶりに「古書コンコ堂」に足を踏み入れた彼が目にしたものとは……というのがこれまでのお話。


ときに古書コンコ堂とはどのような店であるか。
小山力也さんの労作『古本屋ツアー・イン・首都圏沿線』(本の雑誌社)から紹介文を一部引かせてもらおう。
「バランスよく、安価で良書を並べる、二十一世紀型の良店である。古本をとことん商品として扱い供給する姿勢が、とても好ましい。棚には疎かにしている部分は一切なく、一度入ってしまえば、必ず何冊かの本を手にしてしまうことになるだろう」





まさに小山氏の書いているとおりで、硬軟清濁とりまぜたセレクションの妙は、西荻窪の音羽館にも匹敵。超常現象の本がなければ不機嫌になるわたしのような偏った趣味の人間も、そこここに欲しい本を見つけることができるのだ。『フェイト』のUFO目撃談をまとめた本がある! 富士の風穴の伝説集なんてのも面白そうだ。シュルレアリスム関係も充実している。さあて、何を買おうかなあ、と舌なめずりをしていたところ、棚の上に見てはいけない物を見つけてしまった。

 

『デニス・ホイートリー黒魔術小説傑作選』(国書刊行会)全巻セットである。


いや、買う気はなかった。
デニス・ホイートリーは代表作『黒魔団』を「ドラキュラ叢書」で読んでいて、わたしの中では「面白いけど……ま、大体分かった」という位置づけのホラー作家であったのだ。クライヴ・バーカーがホイートリー作品を「彼の書く登場人物には、まるでイギリスは帝国を失っていないとでもいうような、ある種『英国的』な雰囲気が漂っている」と評しているが、『黒魔団』もまさにそんな感じ。ハラハラドキドキの冒険活劇で面白いんだけど、大時代なところも多く、それほどたくさんは読まなくてもいいかと思っていた。
だからこれまで古本屋で『黒魔術小説傑作選』を見かけても(あちこちでよく見かける)、その都度パスしてきたのである。


(ホイートリーの代表作『黒魔団』/国書刊行会ドラキュラ叢書版)


それより何よりこの傑作選、国書刊行会の本だけにでかくてごつくて重いのである。言葉を換えるなら、重くてごつくてでかいのだ。
新刊を買うたびに「ああ、どこに置こう……」と頭を悩ませている者からすると、全5巻7冊ハードカバー函入りという『黒魔術小説傑作選』はまさに悪魔のような代物。いきなり熱帯魚の水槽がやってくるようなものである。いま以上に書斎が狭くなったら、わたしは立ち飲み屋のようなスタイルで仕事をするしかなくなる。


なのだが。
さすがは「安価で良書を並べる」コンコ堂。『黒魔術小説傑作選』も安かったんですよねえ。
全巻揃い帯つきで3600円。え、そうなの? 値段をみてグラリと心が揺れた。もともとさほど古書価の高いシリーズではないが、一冊あたり500円というのは破格だ。漫画1冊分。これなら手を出してもいいのではないか、という気がちょっとしてくる。そういえばあの熱血漢的な作品世界、ラムレイに通じるものがあって嫌いではない。しかし……うちの部屋にはあんなでかいものを置く場所がない。
店内をぐるぐる歩き回って頭を冷やす。ほかにも欲しい本がたくさんあるが、ホイートリーほど気になるものは見当たらない。どうしようかな。揃ってると恰好いいよな。美品だしな。子どもの家庭訪問で先生に自慢ができるかな。でも立って仕事をするのはイヤだな。しかししかし……。


で、結局。
「欲しいなら買ったら?」という家人のまっとうな一言に背中を押される形で購入。ごもっともです。そんなに欲しいなら買えばいいし、スペースがないなら作ればいいのである。
さすがにまがまがしい全巻セット提げて歩くのも大変なので、後日受け取りという形にしてもらい、代金のみ支払い。これでわたしも晴れて『黒魔術小説傑作選』のオーナーだ。
悩んでみてあらためて気がついたけど、心の底では欲しかったんでしょうね、このシリーズ。いい形で買えてよかった。


というわけであるから。
この数日のうちには書棚のスペースを大きく空けなければならないのだ。
このままだとホイートリー先生、やってきた瞬間、机の下に平積みされてしまう。床に積まれた本はそのまま行方不明になってジ・エンド、というのが世の習いであるから、なんとかスペースを捻出しなければならない。いまざっと周囲を見渡した限りでは、処分できそうな本はゼロ冊。


噫、どこかの天才が泥棒に入って、不要な本だけ抜き出してくれないものだろうか……。



もう少し棚が欲しいと書痴が鳴く(芭蕉)2


さて。
なぜわたしが本を処分しなければならなくなったのか。
すべては阿佐ヶ谷に出かけたのがいけなかったのである。


中央線沿線にお住まいの方はご存じであろう。いま東京都杉並区の阿佐ヶ谷駅前では毎年恒例の「阿佐ヶ谷七夕祭り」が開催されている。
8月開催の七夕祭りといえば仙台のものが有名だが、阿佐ヶ谷の七夕も負けてはおらず、今年で実に64回目。昭和20年代から続いている伝統のあるお祭りだ。
と、知ったようなことを書いているが東京に住んでいてこれまで一度も行ったことがなく、今日(8月6日)初めて足を運んできたわけです。


それはもう結構でございました。
あの蛇のように長いパールセンター商店街が、色とりどりの吹き流しと手作りのはりぼてで飾られ、通りの両側には出店がずらりと居並んでたいへんな賑わい。
南口ロータリー広場で催されている盆踊り大会では、おばあちゃんたちが荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」にあわせて可愛らしく跳ねかつ踊っておりました。




露天の生ビールやワインに心惹かれながらも、わたしはアルコールが一滴も飲めないのだということを思い出し、甘党の本領を遺憾なく発揮して「とらや椿山」で焼きたてのなみすけどら焼きを、「たいやきともえ庵」で鯛焼きをそれぞれ買い食い。


焼きたてのどら焼きというのは初めて食べたけどほぼホットケーキで、ちょっとした焦げ目が香ばしく、あれはあれで美味しいものでした。ちなみに「なみすけ」というのは杉並区のオリジナルキャラクターです。
ともえ庵のたい焼きはパリッとした薄皮が特色。これまで食べてきた薄皮系のなかでも、かなりのパリパリ伝説系ですね。その薄皮が粒の立ったもっちりあんことよく調和して、喩えるなら甘い鈍器。この食感が楽しい。ふだんは行列のできるお店らしいので、すんなり買えてよかったよかった。







南口の商店街をたっぷり堪能した後は、阿佐ヶ谷駅構内を抜けて北口へ。
北口といえば映画館のラピュタ阿佐ヶ谷がある側ですが、小さい飲み屋が多くてこれまた大賑わいでした。下戸なりに路地をさまよいつつ、じりじり足を向けたのは「古書コンコ堂」。
知る人ぞ知る阿佐ヶ谷の名物古書店です。
久しぶりに訪れたこの店で、わたしはある決断をすることになるのですが……。


→続きを読みたいという人は「3」へ。
→ここまでのあらすじを忘れた人は「1」へ。
割とどうでもいいかも、という人は日野日出志でも読んで待っててください。




2017年8月6日日曜日

もう少し棚が欲しいと書痴が鳴く(芭蕉)1


荒俣宏氏が膨大な蔵書をあらかた手放し、某出版社に寄贈されたらしい、という話題は先日もすこし書いた。
奇しくも、荒俣氏とならぶ本邦怪奇小説界の巨星、紀田順一郎氏もこれまた数万冊という蔵書を処分されたそうである。
その詳しい顛末が最近刊行された『蔵書一代 なぜ蔵書は増え、そして散逸するのか』(松籟社)に書かれてある。


紀田氏がぎりぎりまで処分をためらったのが、他ならぬ怪奇幻想文学関連の書物だったそうで、月給1万2000円というサラリーマン時代に6000円もする洋書の『ラヴクラフト書簡集』を苦心して手に入れたエピソードなどを読んで知っているだけに(『幻想と怪奇の時代』)、稀代の愛書家と蔵書との別れを描いた同書の記述には、思わずもらい泣き、ウウムと腕組みして唸らざるをえない。


本に囲まれた自らの行く末をしみじみ考えさせられる衝撃の蔵書論集であるので、本を蒐めること買うことがお好きな方には一読をお薦めしたい。




さて。
前置きが長くなったがここからが本題であって、わたしもちょっとした理由から本を処分する必要が出てきたのである。
といっても、全然たいした量ではない。本棚の幅にして約30センチ強、単行本に換算するとせいぜい12冊から15冊程度なのだが、いざ減らすとなるとこれでなかなか大変だ。
どうしてそんな必要が出てきたのか?


→順を追って知りたい人は「2」へ。
→結論だけ知りたい人は「3」へ進め。
といきなりゲームブック風。さあ大変なことになってきた。


2017年8月4日金曜日

この夏の課題図書、『21世紀ホラームービー年代記』


これは便利だ!


何がって『21世紀ホラームービー年代記』(山崎圭司、岡本敦史、別冊映画秘宝編集部編/洋泉社)ですよ。
これはタイトルのとおり、21世紀に入って造られたホラー映画のガイドブックなのだけど、いやあ、拝みたくなるくらい便利ですね。こういう本を待っていた人、多いんじゃないかな。


(表紙でほほえむアナベルちゃん)


ひとくちに「21世紀ホラームービー」といってもその作風は多彩、しかもどことなく散漫漠然としており、一介の映画ファンにはこれまでどうにも全貌を把握することが難しかったのですよ。


ゾンビが全速力で走る一方、拷問やデスゲームが暗い部屋で繰りひろげられ、POVの手ぶれ映像をやたらに見せられたかと思うと、古典作品のリメイクが次から次と現れる。とりあえずそんな印象はあるのだけど、じゃあ、21世紀ホラーとは何だったのか、この20年弱の間にホラーに何が起こったのか。そう正面切って問われると、答えるのはなかなかに容易ではない。
同じように感じているホラー映画ファンは、きっとわたしだけではないと思う。


で。
本書はそうした疑問に、圧倒的な情報量をもって答えてくれる良書だ。


なんといっても特筆すべきはその情報の濃さ、深さである。
人気タイトル、有名シリーズの紹介はもちろんのこと、ジェイソン・ブラム、ジェイムズ・ワンら21世紀ホラーを語るうえでは欠かせないキーパーソンの経歴(有益!)、21世紀のアメリカン・ホラー十傑と裏十傑(わが偏愛の『ファイナル・ガールズ』が選ばれていて嬉しい)、2000年代に狂い咲いた〝拷問ポルノ〟系作品や古典リメイクの総括、さらには誰が見るんだよという動物パニックホラーまでを網羅(ここも無駄に情報量がすごい)。


ホラー映画といってもハリウッドに偏らず、フランスやスペインなどのヨーロッパ各国、韓国や香港に東南アジア諸国、日本国内の動向までをきちんとフォローする視野の広さ。それを支えているのは、一騎当千のライター陣の活躍である。インドネシアやベトナム、トルコのホラー映画事情まで分かってしまうんだから、これで定価1500円はお安いといえる。


本書を手にいれて約10日間、舐めるようにページを繰った結果、これまでとっちらかっていたレンタル屋のホラー棚が、ギューッと整理されて頭に収まった。作品やキャストの情報はもちろんウェブでも得ることができるけれど、こういう凝縮効果を得られるのは紙の書籍ならでは、という気もする。


本書を読んでいるととにかくホラー映画が観たくなり、途中で観るのをやめた『ファイナル・デスティネーション』も最後まで付き合ってみようかしら……という気にさえさせられた。
で。
とりいそいぎ本書の記事に惹かれ、現在公開中の『ウィッチ』を鑑賞してきた。
うむう。塩加減が絶妙な、ハードかつリアルな魔女ものホラーでした。
森の奥から不穏な気配がじわじわ漂ってくる映画なので、アーサー・マッケンあたりが好きな人は是非。
 



2017年8月2日水曜日

カフェ・ベローチェで怪談を


どうやら集中力を母親の胎内に忘れてきてしまったらしく、家ではまったく仕事ができない体質である。
そこで一日中、チェーンのコーヒー屋やファミリーレストランを転々として、仕事関連のゲラを読んだり、原稿を書いたりという暮らしを送っているのであるが、昨日某駅ちかくのカフェ・べローチェに立ち寄って、思わずあッと声をあげてしまった。


お姐さんからホットコーヒーの載ったトレイを受け取り、ふと脇に目をやると「怖い話」という文字が目に飛び込んできたのである。黒い小さなチラシであった。
(なにかの催し物かな……)そう思って何気なく手を伸ばして、愕いた。


うわあー!
ベローチェで怖い話フェアをやってるー!



 (怖い話で涼みませうという主旨のチラシ)


チラシによれば、7月17日(月)から8月31日(木)まで、店内で配布の「怪談札」に記載されたQRコードにアクセスすると、怪談語りを視聴できるというサービスを実施中らしい。
登場するのは稲川淳二座長を筆頭に、山口綾子、怪談社(上間月貴、糸柳寿昭)、ファンキー中村という結構本気な面子。
コーヒー屋で怪談。Macブックでもビジネス書でもなく怪談。これは新しい。


コーヒーを飲みながら稲川師の怪談が聞けるのは最高だし(これぞ日本の夏)、面識ある怪談社のお2人が絡んでいるのも嬉しいではないか。
いったい全体どんな経緯から生まれた企画かは知らないが、これを実現したベローチェは偉大である。
もともと飾らない雰囲気で好もしいコーヒーチェーン(喫茶店形式のシャノアールも好き)。ますます応援したくなりました。


昨日ゲットした怪談札は稲川淳二さんの「劇場の恐怖」。
残るはあと4枚。毎週通って手に入れようと思ってます。


(幣髏御魑廻でベローチェはちと苦しい)


ところで、これって界隈では有名な話なのだろうか。
わたしはツイッターの類をほとんど見ないので、どうしても世事に疎くなりがちなのであるが(知っていたら1週目から通っていただろう)、まあやっていないものはしょうがないよね。


おもしろげな情報があったらぜひお電話かメール、電報かESPでお知らせください。

2017年7月28日金曜日

荒俣宏『お化けの愛し方』刊行記念イベント


おはようございます。怪奇幻想ライターの朝宮運河です。
久しぶりの更新なので思わず自己紹介してしまった。
扠。
書きたいネタは諸々あるのだが、目下月末に迫ってくる謎の生命体に追われており、なかなか時間が取れないのである。今日はとり急ぎ、一つの話題を提供して去ることにしたい。


荒俣宏『お化けの愛し方 なぜ人は怪談が好きなのか』(ポプラ新書)という本が刊行され、その記念トークイベントが7月26日、八重洲ブックセンターにて開催された。




『お化けの愛し方』はこれまでホラーや妖怪、怪奇幻想文学に関する著作を多数世に問うてきた知の巨人・荒俣宏が、人とお化けの関わりについてあらためて論じた「最後の『お化け学』出版物」である。
人とお化けのロマンティックな恋を扱ったいわゆる「恋愛怪談」(江戸川乱歩)の系譜を、中国の『剪燈新話』から円朝の『怪談牡丹燈籠』までたどり、もうひとつの怪談文学史を掘り起こした好著であった。


で。著者のトークイベントを観覧してきたわけです。
いや~、びっくりしました。
何にびっくりしたって、『お化けの愛し方』についてのトークショーなのかと思いきや、ほぼ全編にわたって平井呈一の話だったんですよ。


荒俣氏も今年でなんと70歳。そろそろ作家業は店じまいするらしく、膨大な蔵書もほぼ手放してしまったそう(某出版社にまとめて託したとか)。イベントではそれに際して作成された蔵書票が、来場者にも配られました。児雷也です。




で。
「では僕はいま何をやっているのか。今日はそれをお話ししたいと思います」と、前置きされてはじまったのが、平井呈一をめぐる興味津々のお話だったのですね。


作家業を半ばリタイアした荒俣氏は、これまで気にかかっていた亡き師・平井呈一の足跡を辿る旅に出発。日本各地で関係者を訪ね、生前の平井呈一についてインタビューしているそうです。
その結果、新潟県立小千谷中学の英語教師として過ごした疎開中の知られざるエピソードや、長らく不明だったお墓の所在などが判明。荒俣氏もついに墓前に手を合わせることが叶ったそうです。


かつて千葉県にあった平井邸跡地の現状(こんもりした林になっていました)や、近年になって発見された貴重な原稿・書簡(1969年に荒俣氏が平井翁に出した年賀状など)が写真とともに紹介されたりもして、怪奇幻想文学のファンとしては「こんな貴重な話、さらっと聞かせてもらっていいの!?」という感じの衝撃の一夜でした。いやあ、いい話を聞いた。


「調べ物が一段落したら、本にまとめようと思います」とおっしゃっていたので、本格的な店じまいはまだしばらく先のようです(笑)。
 

なお、平井呈一の経歴と作品については、東雅夫氏による力作評伝「Lonely Waters――平井呈一とその時代」(創元推理文庫版『真夜中の檻』所収)が詳しいですが、あいにく現在品切れ中。
と、思ったらこの秋に復刊されるらしいですね。ばんざーい。




というわけでまた次回!
月末にやってくる謎の生命体を倒しながら、近々また出てきます。
 

2017年7月9日日曜日

『ダ・ヴィンチ』8月号で道尾秀介さんにインタビュー!


本とコミックの情報誌『ダ・ヴィンチ』8月後(KADOKAWA)が7月6日発売された。




今月の特集は川原泉、プロレス、住野よるの3本柱。
わたしはいずれも詳しくないので特集には関わっていないが、新刊インタビューのページで道尾秀介さんに新刊『満月の泥枕』(毎日新聞出版)についてインタビューさせていただいている。




『満月の泥枕』は、大胆な構成(中盤あたりでがらりとトーンが変わる。まるで乱歩の『猟奇の果』!)と、緩急自在の語り口が魅力の人情ミステリーだ。東京の下町に住む主人公たちが、ひょんなことから奇妙な事件の当事者になってゆき、それと同時に停滞していた人生も動き始める。


インタビューではそうした作品の特色についてあれこれと質問をし、その都度丁寧にお答えいただいた。その肉声をどれだけ記事に反映できたかは心許ないが、一読いただけると幸いである。合掌。





2017年7月8日土曜日

BIBLIOPHILICのブックストッパー


おお、壊れてしまった。
ブックストッパーが壊れてしまったのである。





ものを書く機会の多い人なら共感していただけると思うが、書籍や雑誌を参照したり引き写したりする際に、「このページがもっと開けばいいのに!」と腹立たしく感じることがある。


本というのは放っておけば閉じる構造になっているから、参照したり引き写したりしていると、一度や二度は「ぺろん」と情けない音を立てて、何事もなかったように閉じてしまう。
これがなかなかにストレスなのである。


携帯電話(ガラケー)でページを挟んでみたり、パソコンの縁でページの隅を押さえてみたり。いろいろ工夫はしてみたのだが、根本的な解決にはつながらない。油断したころにまた「ぺろん」となって、両目から火花が噴き出す。
とくに難物なのが冒頭や結末部で、重しをしてもすぐに浮き上がってしまうのだった。


どうにかならないものか。


そんな時にたまたま出会ったのがこのブックストッパーであった。5年ほど前のことである。場所は新宿。ディスクユニオン中古館の脇に当時できたばかりの書店、ブックユニオンであった。





「BIBLIOPHILIC(ビブリオフィリック)」の豊富な読書グッズの中に見つけ、長年探し求めていた商品はこれだと直感。すぐさま買って帰った。


感動しました。


本を開く、ブックストッパーでページの隅を挟む。
たったそれだけで長年の悩みがたちまち解決してしまった。
小さいながらそれなりに重量があって大抵の本は押さえられるし、ストッパー部で文字が隠れることもない。麗々しく書かれた“これは便利”の文字に偽りはなかった。


もともと、わたしは本を写したり引用したりするのが好きなのである。
好きな作家の本はとりあえず写してみる奇癖があって、江戸川乱歩の長篇『孤島の鬼』は創元推理文庫版でたしか2回半丸写ししているはずだ。読書の一環として、そういう遊びをするのが好きなのである。
このブックストッパーに出会って以来、引き写したり引用したりするのがますます楽しくなったことは言うまでもない。


そして今日。


ふと「好きな本でも写そうかな」と思い立ち、菊地秀行の『夢見る怪奇男爵』(角川書店)を書棚から抜き出したのだった。
菊地秀行のエッセイや評論はホラーへの深い思いがにじんでいてどれも大好きだ。『魔界シネマ館』もいいが、この『夢見る怪奇男爵』もいい。山村正夫の文庫解説のページを拡げ、クリップでページを挟む。その瞬間――。


あ、壊れた。


さすがに5年も経つとプラスティックが劣化してしまうのであろう。
洗濯ばさみだってしばらく使っていると割れるものなあ。とはいえ壊れた瞬間、ショックのあまり「シェー」の姿勢でばったり倒れ込んだのは、これまた言うまでもあるまい。
ブックストッパーのない人生はもはや考えられないので、早速買ってこようと思います。BIBLIOPHILICのサイトで通販も可能なので、興味のある方はどうぞ。