2018年2月28日水曜日

怪老人日乗:2月28日(水)

快晴。起きて朝食。
白米に納豆、さつま汁、のらぼう菜の胡麻和えなど。のらぼう菜というのは、今の家に越してきて初めて知ったもので、東京都あきるの市などで生産されているローカルな春野菜らしい。苦みがあって旨いのだが、この話前にもしましたっけ?


先週末からかかりきりだったインタビュー原稿2本、やっとゴールが見えてきてぎりぎりとやる。昨晩おしまいまで書いたものを印刷して字数調整、さらに足したり削ったり。このあたりの作業、熊の木彫りなどを作るのに似ている気もするが、熊の木彫りを作ったことがないので、正直なんとも言えない。
2本まとめて完成させ、担当さんに送ったのが15時半。終わった、終わった。時給1000円余裕で割り込んだけど、なんとか終わった。ふらふらと戸外へまろび出て、近所のスーパーでチョコレット買う。ストレス低減チョコGABAというのは、効果があるかどうか知らないが、つい疲れたら買ってしまう。で、みるみるストレスが低減する(気がする)。外はどんより薄曇り。テレビの天気予報によると、明日は春の嵐だという。新宿まで高橋洋監督『霊的ボリシェヴィキ』を見に行くつもりだが、吹き飛ばされないか心配。


ホラー映画はちょいちょい見ていて、ジョーダン・ピール監督『ゲット・アウト』が評判どおりの面白さだった。
ロジャー・コーマンの『侵入者』、ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』といった人種問題テーマ映画を連想させつつ、観客の先入観を巧みにひっくり返してゆく脚本がうまい。ドロッとしていそうで、骨格はロジカルなのだ。ネタの部分は賛否両論あるだろうし、犯罪計画がずいぶん杜撰だなと思わなくもないが、私は「そうか、そうか、そうきたか」とB級テイストも含めて楽しく見た。平日の昼間だというのに、渋谷のヒューマントラストはほぼ満席。東京は映画人口が多いのねえ、とあらためて思いました。


出てきたついでに近況を述べると、この週末は骨休めで伊東温泉へ。またしてもハトヤに泊まる。昨年泊まった時にはうちを含めて数家族しかおらず、それに合わせて従業員さんも少なめで、ほとんど『シャイニング』状態だったのだが、今回は春休みということもあってか、バスツアー客もおり、食事も本来のビュッフェスタイルであった。2階の上がすぐ7階、という謎めいた六角形の別館に泊まる。


2日目は車で熱川のバナナワニ園まで。右も左もワニ、ワニ、ワニ、たまにレッサーパンダ、という心和む施設である。大中小のワニももちろん可愛いが、ワニ園の向かいにある熱帯植物園もひそかな見所だった。無数にある温室では蓮や蘭や食虫植物が生い茂り、古びたエレベーターが、その間を亡霊のように上下している。ドーム状をしたフラミンゴのフェンスも半ば錆びつき、しっかり管理されているのに、どことなく退廃を感じさせて、この世の果てのような、誰かの見ている悪夢のような佇まい。これまでにこういう温室が出てくる小説をたくさん読んできた気がするが、さてタイトルは何だったろうか。末永く営業を続けて欲しいものです。




帰りは前から気になっていた、「怪しい少年少女博物館」に立ち寄る。
「レトロで可愛くてグロい」というキャッチコピーのマイナー博物館だが、基本的にはまあ怖いですよ。アメリカのホラー映画(『ファンハウス』とか)に出てきそうな、ロードサイドのいかれた珍施設そのものである。とはいえ昭和レトログッズを中心とした展示品の充実ぶりはものすごく、ファッション、レコード、懐かしオモチャ、アイドルグッズ、その他諸々、どこから集めてきたのか想像もできないくらいの量がある。この密集具合と圧の高さは、札幌の珍スポット『レトロスペース坂会館』に近い。全部まんだらけに持ちこんだらいくらになるのか、と思わず考えてしまう。


2階の一画はなぜか怪奇コーナーになっており、ここが最高に居心地がよくてつい長居。からかさお化けにろくろっ首、のっぺらぼうに豆腐小僧。頭が2つある牛の剥製まである。わたしはこの手の張りぼてお化けが大好き。いくら見ても見飽きない。作りものの墓石や卒塔婆も好きで、自室に据え置きたいくらいだ。







と思ったら、施設裏手に「夜の学校」というリアルお化け屋敷を発見。矛盾するようだがわたしは怖がりなのでお化け屋敷は苦手である。しかしま、職業的義務感に突き動かされ、3歳児らを連れて立ち入る。ひえええー!怖い、暗い、動く!もっと手作りっぽい、高校文化祭レベルのものを想像していたが、意外にも本格的なギミック満載で心臓が止まりかけた。一人なら絶対入口で引き返していたであろう。
とはいえ、迎えてくれるお化けたちは皆、オーソドックス、かつキュート。白い骸骨が上下に動いたり、顔中にお経が書かれた生首が光ったり。懐かしい怪談映画のテイストがあって、昨今のハイテク&人間が脅かしてくる系お化け屋敷があまり得意でないわたしは、「こういうのが見たかったんだよ!」と都会に向かって叫んだね。距離も長すぎずでちょうどいい。



KADOKAWA編集N氏からここに故・村崎百郎氏関連の展示があると聞いてきたのだが、探し出せなかったので受付のお姉さんに尋ねる。本部に電話で確認してもらって判明。こちらの勘違いで、村崎百郎館があるのは姉妹施設「まぼろし博覧会」の方であった。残念だったが、これは次回以降のお楽しみであろう。
というわけで、ウーパールーパーのように呑気に暮らしている2018年春、確定申告には一ミリも手をつけていない。合掌。




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